東南アジアの仏教国では位の高い僧が亡くなると、火葬する前に解体して、信者はその肉を食べていたという話は有名である。

高僧の徳が自分に宿ることを期待して信者は肉を食み、僧自身も生前に食べられることを望んていた。

食べることで生前そのモノが持っていた力が宿るという考え方は多くの地域で共通している。

ゴリラも時に食用目的で市場に出回ると云うが、ゴリラの肉を食べることでその強さが宿ると信じられており、現地の男達に需要がある。
日本でも遺骨を噛んだり飲んだりする骨噛みが故人との同一化を求めて行われており、人肉食よりも禁忌度が低いためか極道映画やその他作品中で描写されている。

では人肉食は?と言うと、特定の地域で数十年前までは慣習として行われていたということだ。

某地域の高齢で亡くなった故人の葬式では、近親者のみで火葬前に肉を食していたらしく、故人が近親者の内で生き続けることを願っての行為であった。

体の一部を切り分けて、焼く。それを一噛みすると次の人に回して食べたとういことだ。

写真や動画で故人の記録を残せない時代では、記憶こそが故人を偲ぶ唯一の手段であった。自分の心の内で何時までも生き続けて欲しいと思いから、故人を自分の中に取り込んでいたのである。