193 : t[] : 投稿日:2003/02/02 13:29:00
お断りしておきますが、この話は実際にあった山岳遭難事故ですので諸事情により、 
地名・人名など固有名詞は全て省かせて戴きます。 

文化の日と週末の三連休を利用して、前夜発日帰りの山行に出かけたました。 
いい山行で天候は安定していて当分秋晴れが続きそうで、ちょうどその地方の低山 
は紅葉が見頃になる時期で何とも華麗な眺望です。 
手軽な山でしたから、親子連れも随分いました。 
ところが昼過ぎになって、道を間違えたことに気がつきました。 
慌てて地図を読みながら、もと来た所に帰ろうとしたのですが、どういうわけか、どうしても 
尾根筋に戻れません。そうこうしているうちに日が暮れてきます。 
その日のうちに下山するのはすっぱり諦め、風の当たらない場所でビヴァークの支度を整えて 
夜をしのぐことにしました。 
レスキューシートと細引き縄で夜露避けに簡単な天幕を張り、ありったけの防寒具を着込んで 
寝るともなく、うつらうつらしていました。 
夜半、はっと目を覚ました。 
子供の声がします。半泣きで親を捜している様子で親子連れでハイキングに来て、はぐれたのかな? 
マグライトを灯け、声のする方に光を向けて呼びかけました。「こっちだよ、おいで」 
また別の声がしました。やっぱり半泣きで親に助けを求める声でした。 
兄弟ではぐれたのかな? 
もう一度呼びました。「おいで、こっちだよ。おいで」 
またまた別の子供の声がした。 
何か変じゃないか?うろたえている間にも、声はどんどん増えていき、しまいには何十人もの助けを 
求める子供の声が、夜明けまでわんわんと、こだまし続け…。 



194 : t[sage] : 投稿日:2003/02/02 13:31:00
こんなパニック状態で動いたら本当に死ぬ、と白白明けまで必死で待ち、あれほど見つからなかった 
のが嘘のようにあっさりと辿り着いた下山道を、逃げるように下った。 
下山口近くの公衆電話でタクシーを呼び、ようやく人心地がついた。 
運転手さんと四方山話をするついでに、夕べの怪異の事をちょっと尋ねてみました。 
あの辺、何か因縁話でもあるのかい? 
「あるどころじゃありませんよ、お客さん」 
迷い込んだ斜面、そこで、かつて小学校のハイキング一行が天候の急変に遭い、まともな雨具の用意 
もない状態で風雨にさらされた数十人の子供達が、疲労凍死するという痛ましい事故がおきたのは、 
まさにその場所だった。 

ご冥福をお祈りいたします。