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JR福知山線の生瀬駅から武田尾駅間には、旧線の廃線跡が残っていて 
宝塚市民には良く知られたピクニック・コースになっている。 

廃線跡の歩道から見る武庫川渓谷が美しいんだけど 
何と言ってもハイライトは5つほどあるトンネル。 
うち2つは長さが数百メートルある上に、途中でカーブしている。 
つまり完全な闇に包まれるわけだ。 

オレが歩いてた時は、周りに人通りがほとんどなかった。 
懐中電灯を頼りに、トンネルの内部を歩いていると 
トンネルの壁の方向から、かすかに人の声が聞こえてきた。 

いやあ全身総毛立つとはこのこと。逃げたくても逃げ場があるわけもない。 
かえって度胸がついて、声の方向に耳を澄ましてみると 
声の内容は恨めしい泣き声やうめき声、とかではなくて 
数人が談笑しているような声だった。 

これはどういう事だろう?トンネルの裏に道路があるわけでもない。 
オレの出した結論は「固い岩盤が導線の役割りを果たして 
トンネルの外にいるハイカーの声が、ちょうどカーブの地点にいた 
オレに伝わってきた」というもの。 

分かっていても、暗闇の片隅からボソボソ声が聞こえてくる、 
というのはかなり怖い。 
天井を見ればSL時代のすすで真っ黒。かすかに煤の匂いもする。