869 : 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ [sage] 投稿日:2009/06/06(土) 17:56:33 ID:MaQ2T8Pi0 [1/5回(PC)]

先輩の話。 

霧が掛かった秋の山を歩いていた。深い薄野原を一人掻き分けながら。 
藪漕ぎの手を休め、身を屈めて一息吐いてから再び顔を上げた。 


目の前に、ついさっきまで無かった物がある。 

真黒い柱が一本、ヌッと立っていた。 


次の瞬間、異様な悪寒に襲われて、身動きが出来なくなった。 
柱の上に何かがいて、それが自分を見つめている。 
上の方まで視線は上げられなかったのに、何故かそのことだけはわかった。 

冷や汗を流しながらゆっくりと目を閉じる。と、さっぱり悪寒が消えた。 
恐る恐る目を開けば、もう柱はどこかへ消え失せていた。 


出来るだけ急いでその薄野原を抜けたそうだ。