976 :本当にあった怖い名無し:2012/03/22(木) 16:42:05.23 ID:QtJyl1OQO
厨房の時、修学旅行で広島へ行った。 
原爆ドームへ向う道中、川に架かった橋を渡っていると、ガイドさんが「原爆で大火傷を負った人々が水を求めてこの川に殺到し、大勢がこの場所で生き絶えた」と教えてくれた。 
お調子者のKは同じ班の俺やその他の連中に「おい!川に無数の手が見える!」「人々の呻き声が聞こえる!」などと不謹慎な冗談を言いまくっていた。 
勿論Kに霊感など無い。ただの構ってちゃんである。 
一々反応するのは疲れるので、皆でスルーしていた。 

 
977 :本当にあった怖い名無し:2012/03/22(木) 16:44:09.44 ID:QtJyl1OQO
旅館で俺はKとその他三名と同室であった。
夜になってもKはずっと「ドームから焼けただれた顔がコッチを見てた」等々、嬉々として語っていた。 
俺はウンザリしていた。 
消灯して寝る段になっても「おい窓に人影が」などとほざいていた。 
しかし皆疲れていたので早々に寝息が聞こえてきた。
K以外は前日明け方まで馬鹿話で盛上っていたので寝不足だった。
たっぷり眠っていたKのみ元気であった。 
俺は何故か眠たいのに眠れなかった。 
Kは眠っている連中にお構い無く10分置きくらいに「天井に顔が「赤ちゃんの泣き声が」などと宣っていた。 



978 :本当にあった怖い名無し:2012/03/22(木) 16:50:05.66 ID:QtJyl1OQO
俺は寝たふりをしていたが、何度も寝返りをうっていたのでKに狸寝入りを見抜かれていたのかも知れない。 
その内「ブスゥゥゥゥ…ブスゥゥゥゥ…」という変な息の吐き方をし始めたのでマジで腹がたってきた。
本気のクレームを入れてやろう、Kの反応次第では怒鳴り付けてやる、そう思ってKの方を見た。 
俺はドキリとした。 
何者かがKの枕元で正座をしていた。 




979 :本当にあった怖い名無し:2012/03/22(木) 16:51:38.79 ID:QtJyl1OQO
別室の友達が遊びに来たのだろう。 
そう思った、思おうとした。 
しかしKの枕元に座りKの顔を除き込んでいる何者かは真っ黒な影の様にしか見えず、男か女かすら解らなかった。 
友人なら構ってちゃんのKが黙っているハズなどない。しかしKからは緊張しか伝わって来ない。 
「ブスゥゥゥゥ…」という変な呼吸音はKが出しているのか、それとも影の様な奴からなのか解らないが、異常事態が起きている事を告げていた。 



980 :本当にあった怖い名無し:2012/03/22(木) 16:55:42.32 ID:QtJyl1OQO
俺はすっかりビビって硬直していた。 
影と目が(奴に“目”が有ればの話だが)合ってしまわない様に目をきつく閉じ息を殺した。 
怖くて寝返りもうてない。目を開けると今度は自分の顔が覗き込まれているんじゃないか?と思えて様子を窺う事も出来なかった。 
気が付くと「ブスゥゥゥゥ…」という変な呼吸音は消えていた。奴が消えたのかな?と思ったが、結局目を開ける勇気は出なかった。 
そして、いつの間にか眠りに落ち、朝が来た。多分夢だったのだろうと思った。 
Kがばつが悪そうに「寝小便漏らした。頼むから誰にも言わないで」と同室の面々に懇願してきた。 
K曰く「深夜に恐ろしい夢を見てチビってしまった」「恐怖の余韻が消えず、濡れた布団から出ることも出来ず朝を迎えた」との事だった。 
悪夢の内容は、皮膚が炭化する程焼け焦げた人間に顔をジッと睨まれた、という物だった。 
Kを笑う気には、到底なれなかった。