583 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/05/11(火) 02:29:09 ID:heQnbitS0 [1/5回(PC)]
最近『目のない人』をよく見かけるようになった。 
 
普通の盲目者ではない。眼のある位置に、やたら大きく、黒い空洞がある人だ。 
街角の、何気ないところに立っていて、少し離れた場所から俺をじっと見つめている。 
俺からは、たいてい見え辛い距離にいるんだけど、目の空洞はなぜか良く分かる。 
 
多分俺はいつか失明するのだろうけど、仕方ない。 
俺の家は、ぶっちゃけた話呪われているのだ。

 
584 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/05/11(火) 02:30:23 ID:heQnbitS0 [2/5回(PC)]
話しづらいことだけども。 
俺の父は幼少期、とある小さな山村で暮らしていた。 
 
だが、祖父の兄のTという男が、隣人を殺したことで、一族ごと村八分にあい、 
逃げ出すように引っ越した。引越し先が、いま俺の住んでるこの家なんだけど。 
殺人犯のTなんだけど、祖父が言うにはこれがどうしようもない男だったらしい。 
 
酒を飲んでは、見境無く女に手をだしていたそうだ。放っておくと、人妻であろうが幼女であろうが強姦する男だったので 
まわりにいる良識ある誰か、大抵は祖父だったのだが、Tを止めなければならなかった。 
しかし、そうするとTは激怒し、暴れだしていた。止めようとした人間に、ひどい暴行を加えていたそうだ。 
 
Tは体がとにかく大きく、喧嘩の強い人間だったため、一度激怒すると誰も止めることはできなかった。



 585 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/05/11(火) 02:32:15 ID:heQnbitS0 [3/5回(PC)]
隣家の家長のKが殺されたのは、Tを止めようとしたのが原因らしい。 

奥さんをTに強姦されそうになり、堪えかねてTを殴ってしまった。これがTの逆鱗に触れた。 
Kを殴り倒してのしかかり、ひたすら殴り続けた。Kの家族は、Tの怖さに震えるばかりで、何もできなかったそうだ。 
Kは、動かなくなっても殴り続けられた。顔は、文字通り潰れ、およそ二倍の大きさまで膨れ上がる。 
顔中に紫色の痣が出来、もはや誰の顔だか判別できないほど変形させられたそうであった。 
Tは、最後に、何を思ったか、ピクリとも動かないKの顔から、両眼球をえぐりだした。 
そのまま、目玉を酒瓶に入れ、どこかに持っていってしまったそうだ。 

その目玉は、帰る途中で酒瓶ごと、川に投げ捨てた、とTは言った。そのまま目玉は行方知れずとなった。 
俺の祖父一家は、お詫びの意味もこめ目玉を探したが、結局見つからずじまいだった。 
この一件のために、俺の一家はいわば目玉の呪いというものに受けたそうだ。



586 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/05/11(火) 02:33:22 ID:heQnbitS0 [4/5回(PC)]
Tは、俺が生まれた頃に、酷い病気にかかった。目玉が、両方腐り落ちてしまったそうだ。 
原因は不明である。Tはそのまま病死した。 

その頃、祖父も目の病気に罹り右目を失明した。ほどなくして左目の光も失ってしまった。 
父は、現在進行形で目の悪い病気にかかっている。治る見込みはなく、視力がどんどん弱まり 
失明していくだけらしい。 

俺は、まだ目の病気をもっていない。が、最初に言った目のない人は良く見かける。 
いまだ危害を加えられたり、近くに寄ってこられたりはしていないが、彼を見かける度に背筋が凍る。 
弟も、目のない人を見かけたことがあるという。父も、俺と同じ年のころ良く見かけたそうだ。 
目のない人=Kなのかは、俺には良く分からない。けどなんとなく実感している。 
これが呪いって奴なんだな、と。