785 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/05/16(日) 18:50:34 ID:/rhVV16S0 [1/2回(PC)]
これは母から聞いた話です。 
私の曽祖父、つまり母の祖父が亡くなったときのことです。 
曽祖父は九十八歳という当時ではかなりの高齢でした。 
普段から背筋をぴんと伸ばし、威厳ある老人だったとのことです。 
しかしそんな曽祖父も老衰には勝てず、床に着くようになりました。 
曽祖父は、母の住む家のごく近所に住んでいたため、 
母の母、つまり祖母が看病に通っていました。 

母は当時高校生で、曽祖父が亡くなった日も学校へ行っていました。 
一週間くらい前から、そろそろだと言われていたそうですが、 
まだ大人でない母に、人の死に目など見せないほうが良いという祖母の判断で、 
母は曽祖父の床へは近づくことを許されませんでした。 
学校から帰った母は、自分の部屋で畳の上に仰向けになり、 
とりとめもない考え事をしていました。 
一時間にいっぺん、ぼーんぼーんと、居間にある柱時計の音が聞こえてきます。 
(いま、何時だろう) 
そう思って母が、机の上の置時計を見上げた瞬間でした。 
(あっ!) 
体の自由がききません。視線以外はまったく動かせないのです。 
(これは金縛りだ) 
この事実に少し混乱しましたが、それと同時に母は曽祖父のことを思い浮かべました。 
(まさか、おじいちゃん……) 
すると、曽祖父の家がある方向の壁から突然、白い馬の首が現れました。 
馬はそのまま、壁を抜けて母の部屋に入ってきます。 
白い馬は、着物を着た人を乗せていました。 
何もかも真っ白で、額には三角頭巾。幽霊の装束です。 
幽霊を乗せた白い馬は次から次へと現れ、全部で六頭になりました。 

 
786 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/05/16(日) 18:54:28 ID:/rhVV16S0 [2/2回(PC)]
彼らはゆっくりと、重々しく進んで行きます。 
真っ白な着物のたもとが、風になびくように揺れています。 
その集団が母のすぐ側まで来たとき、その中の一人が母の方を見ました。 
(おじいちゃん!) 
それはまぎれもなく曽祖父の顔でした。 
曽祖父は威厳に満ちた穏やかな、しかし感情のない顔で、 
しばらくの間ただじっと、母を見ていました。 
やがて曽祖父は前を向いてしまいました。 
その時になってようやく、母は首なら動かせるようになっていました。 
彼らがどこへ向かっているのか気になって、母は首をめぐらせて彼らの行く方向を見ました。 
部屋の反対側の壁へ消えて行くのかと思いきや、彼らの進む方向には穴がありました。 
ぽっかりと、灰色の渦のような、異次元への入り口を思わせるような穴でした。 
(おじいちゃん、死んでしまったんだ) 
その穴を見た瞬間、母ははっきりとそう思いました。 
母が見ている前で、彼らは静々と進んで行き、やがてその穴の中へ消えてしまいました。 
彼らが消えると同時に、母の金縛りも解けました。 
そしてその日の晩、母は曽祖父が亡くなったことを知ったのでした。 
亡くなった時刻はちょうど、母が金縛りにあっていた時刻だったそうです。 


この話には、すこしおまけがあります。 
後年のことですが、機会があって、母は友人と金縛りの体験について話をしたそうです。 
その友人の旦那さんは、頻繁に金縛りにあう方で、 
親戚の誰かが亡くなると必ず金縛りにあい、しかもその間、亡くなった人が穴へ吸いこまれていくのを見るとの話でした。 
穴、と聞いて、母が自分の体験談を話すと、友人にその穴の絵を描くよう言われました。 
旦那もそんなような穴だと言っていたから、と言うのです。 
母は近くにあった子供用のクレヨンで、その穴の絵を描きました。 
帰宅した友人の旦那さんにその絵を見せると、その穴はまさに、旦那さんが見る穴にそっくりだったそうです。 

自分としては死後の世界への扉が、 
非常に身近に感じられ、怖かったのでカキコします。 
長文乱文失礼しました。 

そして読んで下さってありがとうございました。