138 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/08/12(木) 20:14:31 ID:IU9fOyvJ0 [4/8回(PC)]
そして石室内でとった写真を確認したら目を疑った。 
その写真には石室内の全景がとれていた。ただ、その中央、床当たりから無数の腕が天井に向かって伸びている。 
しかもまるで石室内から出ようとしているかのように。 
それだけにとどまらず、その無数の手のスキマから女性らしき顔がこちらを俯き加減に見ている。 
その表情は石室の外の光ある世界をじっと見つめるかのような表情だった。 
 無論、皆にもその写真を同行して皆に見せた。 
皆怖がるのだが、○○古墳群の奥に行く足を止める人はいない。 
これが学者、学者の卵の性なのかもしれない。 
でも、恐いものは恐い。不安を消すかのようにしゃべりながら歩いていった。 
フッと右側かを見ると発掘仲間の女の子が真っ青な顔をしている。 
「どうしたの」そう呼びかけてみると彼女は俯き加減でぽつぽつとしゃべりだした。 
「さっきから女の人が木々の間から見えるんだけど、あと右足がとても重い。さっきの写真のせいかな」 
泣きそうな声でこちらにいってくるのだ。 
冗談じゃない。 
女性なんていないし谷間には自分たちしかいない。 
人っ子一人いないのだ。でも最後まで古墳の見学を終えてきた道を引き返す事となった。 
皆、ある種の強迫観念にかられて途中で引き返す事が出来なかったのだ。 
その途中、先輩が「さっき写真とった古墳、もう一度確認してみよう」と言い出した。 
自分も興味があったので探すの手伝ったのだが一向に見つからない。 
まるで元々そこに存在しなかったかのように姿を消していたのだ。 
もう、訳がわからなくなってきた。 

 
139 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/08/12(木) 20:15:28 ID:IU9fOyvJ0 [5/8回(PC)]
さて、後日談なのだが、発掘後の打ち上げの時その写真を肴に皆で酒を飲飲んでいた。 
無論、他の班の人も一緒だ。 
さんざん盛り上がって、さて、片付けに入ったのだが、其の時、テレビが人知れずついたのだ。 
皆、タイマー機能のせいだろうと部屋を出て寝始めたが、自分だけは知っている。 
其のテレビにはタイマー機能はついていないという事を。リモコンは隠した。 
これ以上騒ぎたくなかったから。



140 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/08/12(木) 20:18:41 ID:IU9fOyvJ0 [6/8回(PC)]
 この事をお世話になった古代史の修士の先輩に話した事がある。 
眼鏡のよく似合う先輩だ。いつも修士さんと自分は呼んでいる。 
その人はさも当然そうにこういった。 
「君、そんな事当たり前じゃないか。」 
あまりにもあっさりとした答えだ。 
自分はたまらず「だって、こんなにもハッキリ写っているんですよ。驚かないんですか」少々受けると思って話したのにこの反応ではつまらなかった。 
「君はまだ考古学の知識がしっかりと入っていないみたいだね。そんなんじゃ学者にゃなれんよ」 
そんな風に言い始めた。これには少しカチンときて「意味分からないですよ」と向きになって返す。 
「『ことどわたし考』」 
そう、修士さんはぽつりと漏らした。 
ハッとした。自分が少し恥ずかしくなってきたのを覚えている。 
こんな事を忘れるなんて。 
いや考えるのが恐かったから自分も皆も口に出したり、考えたりするのを無意識に止めていたのかもしれない。