56 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/08/24(火) 18:21:17 ID:4X+mo9RW0 [1/2回(PC)]
それなら自分の知っている民話をば。 

今は昔、鹿児島県の指宿というところになかなか子供のできない夫婦があった。 
夫婦は指宿にある池田湖という湖に毎日通っては「どうか子供ができますように」 
と祈っていた。 
ある時、夫婦の祈りがかなったのかかわいらしい娘が生まれた。 
夫婦は大変喜び娘を大切に大切に育てた。 
しかし、娘は足が不自由で歩くことができなかった。 

そのうち娘は7歳になった。 

この地方では七歳になったおなごん子(女の子)は花タンゴと呼ばれる小さな桶を持って湖へ水を汲みに行くという祭りがあった。 
運んできた水は神や仏にお供えし、子供たちの健康を祈るのだ。 
娘は黙って縁先から祭りを見ていたのだが突然自分も花タンゴを担ぎたいと言いはじめた。 
母親は、娘の好きにさせてやろうと思い花タンゴをそろえてやった。 
娘がタンゴの天秤棒を肩にかけた途端、なんと娘がすくっと立ちあがったのである。 
あっけにとられる夫婦に娘はにっこり笑いながら「水汲みにいっきもんで(いってきます)。あたいのあとをけっしてついてきやんな」と言った。 
娘はそのまま花タンゴを担いで五回も六回も水を汲みに行った。 
母親はあまりの不思議さに、七回目の水汲みに出かけた娘の後をこっそりついていった。 
なにも知らずに水を汲もうとしている娘を見ていると、母親はじっとしていられなくなり思わずそばに駆け寄った。 
娘は母に見つかったと知ると悲しげな顔になり、そのまま湖の中に入って行った。 
母親は必死に止めようとしたが娘はすでに青々とした水底に沈んでしまったあとだった。 
母親が悲しみに暮れていると突然水面が泡立ち七本の角を生やした大蛇が現れてこう言った。 

「来年の今日、親孝行しにもどってきもんで。」 

しかし、母親はあまりの恐ろしさに「いや、もうもどってくんな。」と夢中で叫んだ。 
それを聞いた大蛇はさみしそうに湖へと戻っていった。 
それから湖は七日七夜激しく波立ち、雨のごとくしぶきを上げていた。 
八日目にすっかり静まり返った湖面には花タンゴがふたつ浮いていたという。 

池田湖といえばネッシーならぬイッシ―が有名だが、古くから神の御池として龍神信仰があるらしい。