65 : 1/2[] 投稿日:2010/09/23(木) 11:10:09 ID:KpSku53d0 [1/2回(PC)]
オカンが会社の同僚? から聞いたお話 




話者は男なんだが、二十年も前、二十歳そこらの時分には暴走族をやっていたそうだ。 
毎日、県下では難所として有名な峠道を、暴走族仲間と一緒に爆走していた。 

ある日、その人の暴走族仲間の一人が事故を起こして死んだ。 
その事故と言うのが妙なものだったそうで、カーブを曲がりきれなかったのか、 
彼と彼が乗ったバイクは峠道の外に放り出され、あとはバイクごと谷深い山中へと消えていった。 

一緒に走っていた仲間の通報ですぐさま警察がやってきたが、どういうわけか谷底から彼とバイクが見つからない。 
数百人態勢での捜索活動が行われたが、結局彼の遺体もバイクも見つからなかった。 





数日後、話者の男性が夜中、暴走仲間の男女四人と車でその峠道を通った。 
しばらく経って、今までわいわい騒いでいた運転手の男性が急に押し黙った。 

どうしたんだとみんなが言うと、運転手の男性が「何か聞こえないか?」と言って耳をすます仕草をした。 
突然なんだと耳を澄ましてみると、後方から改造バイク特有の、唸るようなエンジン音が聞こえてきた。 



「あいつのバイクの音だ」 



暴走族だったこともあって、エンジン音を聞いてすぐに、そのエンジン音が事故を起こした彼のものだと気がついたそうだ。

 
66 : 2/2[] 投稿日:2010/09/23(木) 11:12:21 ID:KpSku53d0 [2/2回(PC)]
すぐに、後方からバイクのライトが追いかけてきた。 
そのヘッドライトは光が上下二股になっていた。その改造も、やはり彼のバイクに施されていた改造だった。 

車内は騒然となった。遺体が見つからないとはいえ、場所が場所だ。彼が死んだことは間違いない。 
だったら後ろから追いかけてくるのは……。 

とにかく車を路肩に止めて、彼が来るのを待つことにした。 

バイクの唸りがすぐ背後に来た。ヘッドランプの光が車の横に来た。 
物凄い唸り声を上げて、彼のバイクは車の横をすり抜けて行った。 

テールランプが見えた瞬間、あ、と全員が声を上げた。 



「車体がない」 



そのバイクはヘッドランプとテールランプの光しか見えなかった。 
ランプの光に照らし出されて浮かび上がるはずの車体も、搭乗者も、見えなかった。 

体のないバイクは、そのまま峠道の向こうに消えていった。 





彼の遺体も車体も、いまだに見つかっていない。 

東北の某所、自殺の名所としても有名な峠道であったお話。