647 : 稲男 ◆W8nV3n4fZ. [sage] 投稿日:2010/11/03(水) 21:51:42 ID:AtsuyNR5O [1/4回(携帯)]
先輩が、女連れだった。 
そりゃ、大学生にもなれば彼女の一人くらいいてもおかしくない。 
ただ、先輩はヨーコさん一筋だから、他の女性と付き合うって事は考えられない。 
と、勝手に思っていたわけだが、どうやらそれは思い違いだったらしく、先輩は俺の知らない女性と並んで歩いていたのだ。 
それだけで彼女と断じるのもどうかと思うが、先輩はとにかく女性に人気がなく、全く近寄りもされなかったので、一緒に歩く程度でもかなりの仲に思えた。 
俺は声を掛けようとしたが、二人の時間を邪魔するのもアレだなと思い直し、微笑んで見なかったことにした。 
翌日、先輩を問い詰めてやろうと思いながら。 

「いつだ」 
翌日、いつものように図書館でその話をしたら、先輩は険しい表情で言った。 
先輩をからかってやろうとしていた俺は、予想を裏切る真剣さに驚いた。

 
648 : 稲男 ◆W8nV3n4fZ. [sage] 投稿日:2010/11/03(水) 21:52:58 ID:AtsuyNR5O [2/4回(携帯)]
「昨日です。夕方、駅前のコンビニらへん歩いてましたよね?二人で」 
先輩の眉間に深い皺がよる。 
「女の特徴は」 
「顔はわからなかったです。髪がこう、長かったんで。なんていうか、アレ、貞子みたいに」 
手で顔の横に垂れた髪を表す。 
女性は真っ黒な髪を背中の真ん中あたりまで伸ばしていた。 
さらにうつむいていたので、俺の見た角度からでは顔が見えなかった。 
先輩は溜め息を吐く。 
「そうか。やっぱり」 
どうやら彼女や何やの話では全く無かったらしい。 
良く良く考えれば、いくらなんでもあの女性は異質すぎた。 
それでもなんとなく納得出来たのは、あの先輩の知り合いならあり得るかと思ったからだった。 
「なんなんです?」 
先輩は肩をばきっと鳴らす。 
今日は何やら疲れているようだ。 
「そうだな、使い魔ってわかるか」 
はい、と答える。 
「コウモリだとか、カラスだとかのイメージありますけど、それが?」 
「まずそこから説明しようか。日本だと使い魔ってのは、式神と呼ばれる。知ってるな?」 
式神。 
使鬼神とも言う。 
特定の術式を介して、術者の手駒となる精霊などを使役する術。 
そうか、言われてみればこれも使い魔の一種だ。