製造された食品を一時的に仮取りするために使う、
プラスチック製の「バット」という箱があって、
それらは使わないときは空き部屋にまとめて置いてある。
その空き部屋は、例の分析室・調味室があった旧工場の、
取り壊されずに残った部分にあった。
最近入った若い子なんかは、新しい工場設備が当たり前と思ってるから、
古い部分には行きたがらないらしい。
雰囲気怖いとか以前に、床がボロボロで台車でものを運ぶのも一苦労
というのが大きいみたいだけど。
で、あるとき現場でバットが必要になって、
若い子と二人でそれを取りに行った。
台車に積み上げて運ぶわけなんだけど、
床もガタガタだし安全面とか考慮して、
バットを積み上げるのは10段までという決まりがある。
大体、目より下の高さ。
若い子にそういう決まりとか、運ぶ時のコツとか教えて、
「あんた若いんだから運び係やんなさい!
私ここで積み上げとくから!」
と、指示。
2台車分若い子にそれを運ばせて、
一人でせっせと10段ずつ積み上げ。
誰が最後にバットを使ったのかわからないけど、
あっちに3段、こっちに4段など、ばらばらにしまってある状態で、
「まとめてしまっておいてよね!」
とプリプリしながら整頓がてら作業してた。
若い子はまだ戻ってこない。
必要分だけ積み上げて入り口付近へ。
母も自分の作業は終わったんだから持って行っても良かったんだけど、
あまりにもその部屋が雑然としていたから、
ついでにちょっと掃除を始めたそうだ。
しばらくすると足音が聞こえた。
「あ、若いの戻ってきたな。ていうか遅い(゚Д゚#)」
と思った瞬間、
「えー!!マジ無理、あたしこんなの運べない!!」
振り返ると…
2台車分、天井までうず高く積み上げられたバット。
そのそばで困惑する若い子。
母も茫然としたそうだ。
積み上げる音もなかったし、
「10段まで」という決まりもしっかり守ってたし、
そもそも母の身長じゃそこまで積み上げられない。
本当に、ほんのわずかな時間、背を向けていた時に、
倍以上の高さまでバットが積み重なっていた。
「〇〇さん(母)がんばりすぎー!
てか10段までだから!!」
という若い子に
「バカ言うな!私じゃない!!コノヤロー!」
とキレ返して、なんとか恐怖心をぬぐったそうな。
他にも色々あったそうだ。
しかし今回まとめたこの2つだけは、
どう考えても不思議な出来事だったそうで。
そんな母がうら若き頃から過ごした旧工場の一部も、
今年中に取り壊されて駐車場になるそうです。
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