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 私には小さい頃から多少の霊感があった。 
特におきつね様という狐の霊は、幼稚園に入る前から見えていた。 
(おきつね様というのは、度々私の前に現れる真っ黒な狐の影で、 
迷子になったときに家の近くの神社まで案内してくれたり、危険な場所から遠ざけてくれたりする不思議な存在。 
喧嘩した後泣いているときには尻尾だけ出してみたり、時には人の手の形になって遊んでくれたりもした。) 

小学生のあるときから、人の身体の周りに、淡くぼんやりと色のついたもやもやが見えるようになった。 
部分によって色が違ったり、もやもやの広さ(幅?)が違ったり。 
(当時流行っていた江○さんや美○さんいわくの「オーラ」に似ていると言われたので、仮にこれをオーラとする。) 

見えるオーラは、主にその人の心理状態や健康状態に左右されていたように思う。 
通常は皆緑色なんだけど、体調が悪かったり、過度に落ち込んでいるとどんどん青くなる。 
恋する女の子なんかは黄色になったりもしてた。基本的にはそんな感じで、淡いけど色は必ずあった。

話は飛んで、中学に入る頃には、霊感が強くなってきた。 
と言っても、その霊感には波があって、めちゃくちゃ見える時期とめちゃくちゃ見えない時期が交互に訪れる感じ。 
この頃になると、気配は感じるもののおきつね様はぱったり現れなくなっていた。 


高校に入る頃にはその「オーラ」のようなものは見えにくくなり、霊感も薄くなってきていた。 
最終的には何も感じなくなる……はずだったんだと思う。 


きっかけは、近所の神社のすぐ近くに、妙な神社が現れたこと。 
神社と言っても、普通の民家があってその脇にちょこっと鳥居と祠があるだけの場所。「伊勢神宮の末社で由緒正しき神社」…らしい。 
で、どうやらその2つの神社の相性が悪いらしく(位置関係のせいかも)、私が住む集落全体に悪いものを呼ぶようになったみたいなんだ。 
周りに悪いものが増えるにつれて、私の霊感も少しずつ強くなっていった。 


ある日、新しくできた神社が祭りを開いた。 
祭りと言っても、大々的なものではなく、奉納演舞等をするだけで、その筋のお偉いさんだけを招いて行うらしい。 
その日は朝っぱらから深夜まで笛や太鼓の音が集落にこだましていた。近所迷惑も甚だしい。 


次の日の19時過ぎ、、私がなんとなくふらついていると、久しぶりにおきつね様が現れた。しかし、様子がおかしい。 
おきつね様はついてこいとばかりに尻尾を揺らし、駆けていった。焦っているようにも見えた。 


ついていくと、新しくできた神社の、鳥居の前。そこに、黒いモヤモヤがあった。 
例えるなら、異世界との境目。まさにそんな感じだった。いわゆる鬼門というやつかもしれない。 
とにかく悪い感じしかしなかった。背筋が凍るような空気、禍々しさ。 
おきつね様はいつの間にか消えていた。私は怖くなって家に逃げた。