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 戻ろうとしたらAさんが「あ、名前彫ってあるよ」と大きな声でいったので見に行くと、 
屋上ドアに近い手すりの部分に、「もういくからね みんなサヨナラ マサミ」と彫られていました。 
薄いキズだったのでコンパスなどでなく爪で彫ったのだと思いました。 
よく探さなければ見つけられないようなものでした。 
かなりホコリがたまっていたので古いものだと思いましたが、名前が出ているのでテープを貼り付けました。 

その後、委員会を担当している5年生の女の先生と一緒に確認して歩きました。 
先生は「みんな頑張ってやったね」とほめてくれましたが、 
屋上への階段へ連れて行ってその落書きを見せると 
「マサミねえ。男か女かもわからないね。5年生にはいない。6年生にいる?」と私たちに聞いて来ました。 

私たちは各クラスから一人ずつ出てきているのですが、マサミという子供はだれも心当たりがありませんでした。 
先生は「卒業生かもしれないね。先生もこの地域に来てまだ2年目だからよくわからない。 
後で長くいる先生に聞いてみるね」と言い、 
「それにしても サヨナラなんてなんか気持ち悪いね、卒業するという意味なんだろうけど」と続けました。 

次の日も活動がありましたが、Aさんが来ていません。どうやら学校を休んだようでした。 
その日は話し合いだけでしたので、活動が終わったあと先生に階段の落書きのことを聞いてみたら、 
「・・・あれはやっぱり卒業した子が書いていったみたいだね。消しておきましたよ。そんなに深いキズじゃない 
と思ったけど、けっこう深く彫られてたね」 
という答えでしたが、なんだか話しにくそうな感じを受けました。 
帰りにBさんと階段に行ってみたら、きれいに削りとられて厚くラッカーが塗られていました。

Aさんは次の日もお休みでしたので、Aさんのクラスの担任の先生に尋ねると、 
この季節には珍しいインフルエンザで出校停止になっているとのことでした。 
そして次の日Aさんは亡くなりました。 
これは後でわかったのですが、40度近い高熱で寝ている最中、 
おかあさんがちょっと目を離したすきにマンションの5階のベランダから飛び降りたのです。 
次の日、朝集会で校長先生からそれについてのお話がありました。 

それから3日くらいしてBさんが学校を休みました。BさんとはAさんよりも親しく、 
元気のない様子が続いていたのでとても気になりました。 
そこで家に帰ってからBさんの家に電話をかけましたが、ずっと留守でした。