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恐る恐る玄関に近付いたら警官だった 
警官は真っ先に俺が大丈夫かを聞いて来たが何がなんだかわからなかった 

で、ドア開けたら新聞配達の人もいて、事情を聞いたら、その前に見た方が早いと言われて玄関を見たら包丁が深々と刺さってた 
鍵穴もぐちゃぐちゃになってた 

新聞配達の人は強盗か空き巣と思って警察に連絡したらしい 
警官から色々質問されて、心当たりは無いか聞かれたから真っ先に隣の奴を上げた 
 
十中八九間違い無いし、隣にそんなんがいるのに安心して暮らせないし、金が無いから引っ越しも出来ないから 

で、警官が状況検分とか色々言って刺さったままの包丁と鍵穴の写真を撮ったりしてた 
俺の証言じゃ完全な証拠が無いと捕まえたり出来ないらしいから、とりあえず毎日パトロールってなった 

で、そんな事あっても仕事は休めないし、でも怖かったから朝と夕方警官に迎えというか待機してもらってた 
田舎だからか結構親身になってくれたんだよね 

まぁそんな感じで一ヶ月位経って、鉢合わせも無いし、何の行動も無いし、俺も警官も大丈夫だろってなったんだよね 
それでもパトロールはしてくれるみたいだけど、朝、夕方の待機は止めたんだ 

でも油断してた時が一番危ないって本当なんだよね 
待機を止めて3日後位だったかな、その日は残業でかなり遅くに帰ってたんだ 
家に帰り着いて玄関の鍵開けた瞬間に隣のドアが開いて凄い勢いで走って来たんだよ 

真面目に「ヒッ」って声出してバタバタ入ろうとしたけど、隙間に右足入れられて、思い切り包丁突き付けられた 

閉めるのを諦めて、部屋の奥に逃げた、したら鍵とチェーンみたいなのしっかり閉めて、包丁向けたままこっちに来たのね 

人間って本当に死に直面したらガタガタ震えるのを初めて知ったよ 
充血して血走った目向けながらブツブツ言ってんの、部屋真っ暗で月明かりだけだったから本当にホラーだったよ 

もう無我夢中で色んな物投げたよ、食玩とか本とか 
投げた中で一番重かった目覚まし時計が目にヒットして奴がうずくまった隙に窓からダイブ、今度はトタン屋根で俺が悶えてた 

その音で他の住人が出て来て、巡回中の警官がやって来て、奴は敢え無く御用となった 

懲役望んだんだけど、精神鑑定の結果で精神病院行きが決まった 
これで平穏な日々が帰って来ると思ったけど、そうはうまくいかなかった 

3ヶ月位して、そいつ病院抜け出して会社に押しかけてんの 
丁度、営業出てた時だから良かったけど、本当怖かった 
そいつ格好が格好だったから受付に不審に思われてまたも御用となった 
その後は重病者の部屋に移ったらしい、多分拘束着を着せられるのかな 

でも俺はそれがいけなかったようでクビでは無いけど、遠回しに会社を辞めさせられる事になった 

で、今は実家で就職活動中 

アパートの管理人さんとは今も仲良くて、たまに飯食い行くけど、その時聞いた話によると、食事時に舌噛んで死んだらしいと噂 

精神病院の情報が他人に漏れるとは思わんが、本当だったら俺は自殺志願者を本当の自殺者にしてしまったのかもしれん 

今回得た教訓は下手な好意は人によっては逆効果って事だった