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高校2年生のちょうどこの時期の話。 
その日は定期テストで早く帰れたのもあって、 
普段からスカスカな路線なのに余計に電車がスカスカだった。 
それでi音楽聞きながら携帯触ってたら、 
向かいの座席にカップルが座ったのが視界の端で見えた。 
最初は気にして無かったんだが、視界の端で見えただけだったけど、 
ついつい見てしまった。 


男は中肉中背のハゲたおっちゃんで、 
女の方は日本人じゃなさそうな、アジア系のお姉さん。 
なんか当時の俺は 
外国人のパブのねーちゃんでも連れてるんだと思ったけど、どうも男は女に嫌そうな顔してた。 

しばらくチラチラ見てたら、 
女が男に何か話しかけていた。 
俺は音楽聞いてたから全く内容は分からなかったんだが、女が男の頬に顔近づけたままぶつぶつ喋ってたから、 
「あ、この女の人変な人なんだ」 
って思って目を逸らそうとした。 

だが、 
ちょうど男と目があった。 
ちょっと気まずい感じがしたから 
また携帯いじる事にした。 
周りの人も全く見てなかった。 
 
でもやっぱり気になるからカップルを視界の端で見ていた。 
それからしばらくすると 
女が俺の方をガン見してきたんだ。 
向かいに座ってたからそう感じるだけだと思ったんだが、 
顔を上げるとがっつり目があった。 
俺は不気味だったから地元の駅に着いた瞬間急いで電車を降りた。 


家に帰ってからは 
夜中まで翌日のテストの勉強した後、さっさとベッドに入った。 

すると頬に何か当たった感触がした。
俺は怖くて目を明けられなかったが、その主が誰かすぐに想像が付いた。 
頬のすぐ横でぶつぶつ囁きだした。 
日本語じゃないみたいなのをひたすらぶつぶつ。 
ただ、 
痛い、手当て(?)、紙、泡、来た 
って単語は聞き取れたのを覚えてる。 

その時はなんか、 
あぁ、電車で見たおっちゃんから移ったんだなーとか、 
他の人は”見てない”んじゃなくて”見えてなかった”んだなーとか、 
見えたのがバレたから付いて来たんだろーなーとか、 
もう怖すぎて逆に冷静にいろいろ考えてた。 
気が付いたら寝てしまってて、 
朝になったらアイツは居なかった。 

俺はそっから1ヶ月ほど、不定期に耳元で囁かれることになる。 
気がおかしくなりそうだった。 
3回のお祓いも意味なかった。 

でもある時からアイツは現れなくなった。 
たぶん誰かが”見た”んだろう。 
それでアイツは今も”見た”人をつけ回してるんだと思う。 
何を伝えようとしたのかは、 
今となっては分からない。