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同窓会は、久々に集まった連中と楽しく過ごし、懐かしい思い出話に華を咲かせながらあっという間に 
一次会は終了。二次会、三次会と夜通し飲み明かすことになったのだが、三次会の席で、あの地域の 
話を切り出せそうな流れになったため、現地に行ったことを話してみた。
旧友から聞いた真相はこうだった。 
確かに小さな住宅街と4階建て(5階は俺の記憶違い)のアパートがあった。 
俺が引っ越して数年後、集中豪雨であの地に地すべり・土砂崩れが発生し、10件ほどあった住宅街が 
飲み込まれた。 
丘の上に見えてた管理棟らしき建物は残されたアパートの最上階だという。 

歴史的経緯はこうらしい 
戦中、炭鉱で働いていた半島の方々が半ば違法に住み着き、住宅街を形成した。 
徴用されたこともあり、正規の手続きで国内残留することもできたため、いわゆる通常の市民生活が 
でき、そのため子供たちも学校に通うことができたようである。 
無理な違法造成を自ら行い、違法建築を行いコロニー形成したが、前述の通り土砂崩れで壊滅 
警察・消防の捜査も、土地を奪い返されることを恐れ、徹底抗戦し排除。 
未だに丘の下には数十名が眠っているそうだ。 
そして同級生だったあの子も眠っている。 
彼女が居なかった理由もこれで分かったし、複雑な背景があったことから、みんな口にしなかった 
理由も察した。 

あの子は俺の事が好きだったらしく、俺が引っ越した後、友人に対し「また会いたい」 
と何度も行ってたそうだ。 
その友人も「同窓会あるときには呼ぶから、思いをぶつけてみなよ」と冗談めかして言ってたそうだ。 

同窓会の帰郷とは言え、気になって何度も足を運んだあの小高い丘。 
今になって思えば、彼女の思いが俺をそうさせたのかもしれない。 
明日(といっても今日だが)帰る前に花でも手向けて帰ろうかと話したら、「止めた方がいい」と。

アパートの最上階にはまだ3世帯ほどが住んでいる。 
あの付近をウロウロすると、よそ者を排除するために得物を持って威嚇したり、時には暴力を 
振るわれることもあるという。 
丘の周辺をウロウロした事を細かく話すと、よく無事に帰ってこれたと感心された。 
今では警察・行政ともに黙認状態で、住人が根を上げるのを待っているとも言われてるらしい。 

とは言え、このまま帰るとモヤモヤ感が残る。 
飲み屋街で花を買い、朝一番でタクシー飛ばしてあの丘へ。 
花を手向けられそうで、あまり目立たないところを選び、供えて手を合わせると、ふっと目の前に 
人影が。 
「ヤバイ!」と思ったが、いきなり「○○君だね」と呼びかけられた。 
よく見ると俺と同い年(40歳?)くらいの普段着の女性で、べつに襲い掛かってくる様子も無い。 
てか、何で俺の名前知ってるんだ?? 
色々混乱してると、その女性「これをあなたに」と一枚の封筒を俺に渡す。 
恐る恐る受取り、もう一度女性の顔を見ると、右頬の辺りから耳にかけて傷跡があった 
そして彼女は「昨日も来てたでしょ?もう近寄らないように。ここの事は忘れて」と。 
混乱で何を話していいか分からず、迷っていると「同窓会は楽しかった?みんなと仲良くね」 
と言って、雑木林の奥に消えていった。 
何かを見透かされているような不安感からか、心臓の大きな鼓動が止まらず、パニック状態 
だったがタクシーを呼びとりあえず駅方面へ戻り、スタバに入り、コーヒーを空け気を落ち着け 
てみた。 
そして彼女から受け取った封筒をあけた。 
「次はきっと帰さない。だから二度と来ないで」と書いてあった。 

あれから4年 
オリンピックイヤーに同窓会を開催することとなったため、今年の秋にまた帰郷する予定。 
あの時、心残りのままな俺は多分、あの丘に足を運ぶと思う。