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昔、まだ自分の祖母が存命だった頃の話なんだけど 
当時ばあちゃんは身体が弱ってて 
うちの近所に住んでる伯母宅でほぼ寝たきりだったんだ 
自分はまだ小学2年か3年くらいの頃で 
時々見舞いに行っては 
「ばあちゃん長生きしてな」って言ってたんだけど 
いつも「ありがとうありがとう」って泣くんだよ 
暑い夏で、クーラーなんて無かったから窓も玄関も網戸にしてて 
ばあちゃん用の扇風機はゆるい風を送りながら、いつも首を振っていた 

伯母宅は玄関を上がるとすぐ前に階段があって、台所が隣接している 
だから誰か入ってきたらすぐにわかるようになっている 
その日、昼ごはんを用意していると 
誰かが入って来て、階段をとんとんと上がって行った様な気がしたそうだ 
声も掛けないで入ってくるなんて、一体誰だと思い 
慌てて階段を覗きに行ったが、もう誰もいない 
階段を上がってすぐの部屋には、ばあちゃんが寝ている 
なんだか心配になって、伯母はばあちゃんの様子を見に行ったんだそうだ 

二階には、いつもと変わらずにばあちゃんが寝ていて、他には誰もいなかった 
誰か来なかったかと、伯母が訊くと 
ばあちゃんがなんだか嬉しそうに 
「じいちゃんが来たよ」と言ったそうだ 
祖父は、自分が産まれるよりもずっと前に亡くなっているので 
もう鬼籍に入ってから随分と経つ 
伯母はさっきの気配を思って、少しぞっとしたらしい 
「お前はまだ来ちゃいけないって言うんだ。 
見舞いにスイカを持ってきてくれたんだよ。ほら、そこにあるだろう?」 
けれど、そこには何もない 
ばあちゃんはさらに続けた 
「なんでスイカなんだろうねえ、じいちゃんの好きなものじゃないか」 
そう言って、笑った 

伯母は急いでスイカを買いに走ったらしい 
かなり食が細くなっていたばあちゃんだったんだが 
このスイカは良く食べてくれたと、伯母は言っていた 
そして驚いたことに、その日からばあちゃんは見る見る元気になって 
外に散歩できるくらいにまで回復した 

じいちゃんの仏前には、夏の間だけだが 
毎日スイカが供えられるようになった