やがて、全部の水を飲み干した伯母は
ふうぅぅぅぅ、と長い息を吐き出した
「…やっと、落ち着いた…」
そう言った伯母は、もういつもの伯母に戻っていたそうだ
だが、あれだけの水を一度に飲んだにもかかわらず
普段から痩せすぎなくらいの伯母の身体のどこにその水は入ったのか
伯母の身体のどこにも変化は見られなかったらしい
何よりも、普通の人間があんなに大量の水を一度に飲めるとは
目の前で見ていながら、信じられない気持ちで一杯だったという
「…大丈夫?どないしたん?一体なんやったん?」
恐る恐る訊く母に、伯母は困ったような顔を向けた
「…今日は疲れてたから、近道して帰ろうと思ったんや…」
伯母が言うには、祖父の看病を祖母と交代した帰り道
まだ明るかったので、墓地の中の道を通って帰ろうとしたらしかった
だが他に人の姿も無く、やはり気味が悪いので急いで帰ろうとしていたところ
いきなり囲まれたと言う
「お墓の影から、真っ黒な仏さんがぎょうさん(いっぱい)出て来はってなあ
しがみついてきて、逃げられへんかった
何とか家まで帰ってこれたけど、そっから(そこから)ようわからへん…」
さらに淡々と伯母は語ったそうだ
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