「水やねっ!待ってて!」
母は急いで湯飲みに水を汲むと、伯母の元へと持っていった
それを一気に飲み干すと、再び、もっと水をと母に言う
何度それを繰り返しただろうか
「なんかなあ、のどが渇いて仕方なかったんや
渇いて渇いて、身体が熱うて、どうしようもなく苦しかったんや
でもみんな、もうどっか行きはったわ
水飲んで満足しはったんかなあ…」
零した水でびしょびしょになりながら、伯母はまた大きく息を吐いた
「真っ黒な仏さん」というのがどういう人たちだったのかは
伯母の口から訊かなくても、なんとなく分かったと母は言った
この辺りは昔、戦争で激しい空襲にあい
見渡す限りの焼け野原だったそうだ
そして身元の分からない仏様は、みんな無縁仏として葬られた
病院横のこの墓地にも、そんな無縁仏のお墓がたくさんあったそうだ
実は祖母だけは以前から、このお墓の道を度々使っていたそうなのだが
このことがあって以来
伯母たちにきつく言われて、別の道から祖父の病院に通うようになったらしい
「遠回りになるのに…」
と溢していたと言うから、平気な人は平気なのだろう
そして、病院内でも色々見たと、伯母に散々聞かされてきたせいだろうか
母は今も、病院が大の苦手だ
コメント
コメント一覧 (1)
空襲で焼け死んだ者なんやから仕方ねえか…
ところで最近、コメ欄の更新が遅くね?
見たところ荒らしもいないんやし、承認制もう辞めたらええやねえか?
管理人さんよ?
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