KAI427020_TP_V

「水やねっ!待ってて!」 
母は急いで湯飲みに水を汲むと、伯母の元へと持っていった 
それを一気に飲み干すと、再び、もっと水をと母に言う 
何度それを繰り返しただろうか
「なんかなあ、のどが渇いて仕方なかったんや 
渇いて渇いて、身体が熱うて、どうしようもなく苦しかったんや 
でもみんな、もうどっか行きはったわ 
水飲んで満足しはったんかなあ…」 
零した水でびしょびしょになりながら、伯母はまた大きく息を吐いた

「真っ黒な仏さん」というのがどういう人たちだったのかは 
伯母の口から訊かなくても、なんとなく分かったと母は言った 
この辺りは昔、戦争で激しい空襲にあい 
見渡す限りの焼け野原だったそうだ 
そして身元の分からない仏様は、みんな無縁仏として葬られた 
病院横のこの墓地にも、そんな無縁仏のお墓がたくさんあったそうだ

実は祖母だけは以前から、このお墓の道を度々使っていたそうなのだが 
このことがあって以来 
伯母たちにきつく言われて、別の道から祖父の病院に通うようになったらしい 
「遠回りになるのに…」 
と溢していたと言うから、平気な人は平気なのだろう 

そして、病院内でも色々見たと、伯母に散々聞かされてきたせいだろうか 
母は今も、病院が大の苦手だ