239 名前: 枯野 ◆BxZntdZHxQ Mail: sage 投稿日: 2010/08/21(土) 02:14:52 ID: K36XqKfnP 「一方通行」 1/2
俺の従弟が通っていた高校の近くに公園があった。
古くからある神社の裏手の高台に細長い敷地を持ち、
県道に面した側にブランコと滑り台がこじんまりとあるだけで、
もっぱら土日のゲートボールや夕方の犬の散歩に使われる広場である。
学校から一度坂を上り、公園の辺りで下り始めて私鉄の駅に出る。
そのため、彼らはよく学校脇の酒屋の様なコンビニの様な店でジュースや菓子を買い込み、
公園にたむろしては今週のジャンプやマガジンの内容について語り合ったり、
他愛のない追いかけっこをしたりして遊んでいたらしい。
ある時、そんな調子で遊んでいるうちに日が暮れて来た。冬の初めだったと言う。
男ばかりでそんなことを気にする者はなく、
皆学ラン姿なのに「色鬼する者寄っといで」などと騒いでいる。
風邪気味だった従弟は缶コーヒーを手にブランコに腰掛け、
ゆらゆらと揺れながら黒い人影が薄暮の中でぎゃーぎゃーとはしゃいでいるのを眺めていた。
すると公園の向こう側、神社の森がある側の道路にも黒い人影があることに気付いた。
ブランコは県道に背を向ける格好なので、仲間たちが駆け回っている広場の向こう、
ドウダンツツジの植え込みを挟んで細い道がある辺りまではかなりの距離がある。
赤紫色の夕暮れの中、人影が男か女か、若いのか老いているのか、それすらも判らない。
ただ黙々と列になり歩いて行く姿が見える。
道の向こうは不法投棄避けの高いフェンスがある。公園の短い辺とは言えそこそこの長さを、
フェンス沿いに連なって歩く人々が切れ目なく続くのは何だかおかしい。
従弟は暫くその列を見守っていたが、そっと立ち上がって公園の奥へと向かった。
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