彼女も弟も小学生の頃から同じ塾に行ってて、日が暮れかけた頃に一緒に帰ってくることが多かった。
ところがある時期から、最寄りのバス停からまっすぐ帰ろうとすると、
自宅のすぐそばの空き家のまえで、弟が「怖い、怖い」といって嫌がる。
空き家と言っても、割ときれいに手入れされたものだ。自宅もすぐそこに見えてる。
だが弟は首を振ってどうしても引き返そうとする。
だから仕方なくいつも住宅地を少し遠回りして、べつの方向から家に帰っていた。
で、今では彼女も弟も家を出て一人暮らししてるんだけど、
最近姉弟ともに実家に帰ったときその空き家のことをふと思い出して、弟に聞いてみたとのこと。
すると弟は言いにくそうにして、昔のことだし気のせいかもしれないんだけど、と前置きして話し始めた。
その弟さんによると、
例の空き家の前を通り過ぎると、ちょうど自宅の、姉の部屋の窓が見えてくるらしい。
当時姉と一緒に帰るときによく、その薄暗い姉の部屋のなかに知らない女がたっているのが見えたそうだ。
弟さんは、いや子供の見間違いだったと思うんだけど、と取り繕っていたそうだけど
それ聞いてからはもう、彼女は実家の元自室には近づけなかったって