327 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2008/05/05(月) 01:29:47 ID:OChG1QTH0 [1/4回(PC)]
バイクの話が出たので、狸と関係ないかもですが・・・ 

平成14年も押し詰まった12月29日、前塾長、現塾長、子分1号の3人は以前から 
気にかかっていた「静岡側から芦ノ湖までの直登ルート」の開発に出かけた。 
マシンも「スコルパ」「ベータ」「GASGAS」とパワフルなところが揃い、やる気満々な 
前塾長。沢伝いに順調にルートを延ばし、かなり奥地に入った時、その忌まわしい事件は 
起こった。 それまで順調だったルートが閉ざされ次のルート工作に思案していた時、 
突然、川に踊りこみ対岸の30度以上ある暗い斜面をしゃにむに登り始めた前塾長。 
残された我々は呆然としつつも後に続いたのだった。今思うとこれが事件の始まりだった。

 
328 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2008/05/05(月) 01:31:05 ID:OChG1QTH0 [2/4回(PC)]
鬱蒼とした昼尚暗い斜面を登る事数十分、再びルートが閉ざされ「ここまでか?」と 
思った矢先、前塾長はスイッチバックをし、丸太のステアを飛び越えさらに上部斜面へと 
消えてしまった。残された我々は不安を感じつつも後に続いて登る事にしたのだった。 
ステアに手間取り、上部斜面に出たときには前塾長の姿はすでに消えていた。 
残されたタイヤの跡をたどり、徐々に高度を稼ぐが一向に前塾長の姿は見えない。 
あたりは薄暗く、足元には腐った木が散乱し薄気味の悪い所だ。 
と、突然 現塾長のT中が地面を指差し「ここでUターンしてるぞ」と言い出した。 
なるほどその地点でタイヤ跡がターンしている。 変だ!おかしい! 前塾長はどこに行ったんだろう? 
結局我々は「先に帰ったのかも知れない。帰るか?」 「帰る!!」 
引き返す事にした。  戻り始めてしばらくしておかしなことに気が付いた。先に帰ったはずの 
前塾長のタイヤ跡はおろか、登って来た我々の痕跡すらない。 おかしい、まさか・・・・ 



329 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2008/05/05(月) 01:31:49 ID:OChG1QTH0 [3/4回(PC)]
そう、迷ってしまったのだ。暗い木に閉ざされた尾根、両側は更に暗い沢、迂闊に下ると更に迷ってしまう。 
風が出てきて「ゴオオオーツ」と物凄い音がしている。遠くから遠雷の音も聞こえる。 
それ以上進んでも更に迷うと判断した我々は、少し戻って痕跡を探す事にした。 
そのとき、薄暗い木々の間に動くものが・・・ 前塾長だ!これで帰れる!! 
「いやあ びっくりしましたよ。ところで帰り道はどっちですか」 
「いやいや 俺も迷ってたんだ」 
「・・・・・・・・・・」 
前塾長はUターンなどせずにどんどん進み、ふっと気を抜いたとき後ろの方から「帰る!!」 
と一言だけ声が聞こえたので、怖くなって戻ったそうだ。我々はいろいろしゃべったはずだが 
それは聞こえず、一言だけ明瞭に聞こえたのだという。  更に前塾長は 
「いきどまりだよぉ」って言われたとき帰ればよかった  と変な事を言い出した。 
我々は山に入ってから誰とも会っていない。一体どこで? 
「さっき下の沢でおばさんに会ったろ?」   「・・・・・?」 



330 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2008/05/05(月) 01:32:16 ID:OChG1QTH0 [4/4回(PC)]
状況はこうだ。先頭は子分1号、10メートル遅れて現塾長、更に10メートル遅れて前塾長が 
走っていた。問題のおばさんは沢に立っていて前塾長が通りかかった時、 
「いきどまりだよぉ」 と声をかけたという。  そんなばかな・・ 沢といっても5~6メートルの 
狭いところで、直前の2人が気づかないはずはない。 それなのに・・・・ 
まずい!これはまずい!!早く山から出なくては 
しかし前塾長は全く動じず、アンパンを食っている。豪胆な人だ。 
その後我々は必死で痕跡を探し、ブッシュマンの異名を持つほど眼のいい現塾長がルートを 
確保し下山した。 途中、おばさんがいたという沢にもやはり人影はなかった。 
前塾長にだけ見えたという、おばさんとは一体なんだったのだろう? 
なにはともかく、もう絶対あの沢には入らない。