327 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2008/07/18(金) 14:28:44 ID:4iU+BZZy0 [1/1回(PC)]
私の地元での実話ー。 
ある小さな、田畑の多い山間の集落の、一つの山のの頂上に、 
その集落と先にある海を見渡す一本の大きな大きな山桜の木があったそうだ。 
それはその集落ではご神木の様に扱われていたという。 
毎年春には遠くからでも見えるほど沢山の花をつけ、散る頃には、 
その花びらは風に乗り、その集落の下までひらひらと美しい雪にも似た光景を見せていた。ある年の事。 
その山桜の木を、地主が切ってしまった。巨木の半分を切ったのだ。 
それは、山の斜面に、もっとすももを植えたいから桜の木が邪魔だという理由だった。 
体が半分になった様なその山桜の木は、枯れはしなかったものの、 
数年は弱ってよく花を付けられなかった。 
普段周りから何かと嫌われていた地主だったらしいのだが、ついにご神木を叩き切り、 
何かあるぞ、きっと何かあるぞ。と周囲は密やかに言っていた。 
それはまさに現実となる。「何かあるぞ」は的中し、「ああ、やはり」 
という声に変わったのだ。その地主は農作業中に、 
何故そのような場面でなってしまったのか不思議だとまた周りからささやかれるほど不自然に、 
農機具に足を挟み込み、片方の足の親指を切断されて、二度と畑に出られなくなった。 
また何故かその地主の家族も、様々な不幸に見舞われたと聞く。 
桜には命が宿っている。しかも、ご神木とまで言われる長く生きた桜には、沢山の思いが宿る。 
その山桜は、ただ怒りを向けただけではなく、悲しかったのではないだろうか。 
当時小さかった、その集落に住むある少女は、その山桜が切られた時、悲しくて泣いた。 
痛いだろうに。とても痛いだろうに。 
花散る頃の、雪が降るようなその山桜の花びらを見るのが大好きだった少女は木が切られて何年も、春が来るたび悲しくなった。 
やっとその木がまた花を沢山付けた年、少女は随分大きくなっていた。 
彼女は長い間、毎日桜を下から見ていた。 
そしてやはり悲しくなった。 
なんで、あんなに、花が紅く見えるだろう。 
まだあの桜の悲しみは、痛みは消えていないんだ。 
ああ、散る頃には、血が舞い降るのね・・・。 
大きくなった少女、それは私であるが、今は引っ越してその桜を見ることも出来なくなったが、 
今もまだ、春には、血の花を咲かせているだろうか。 

高知の横浜安ヶ谷のお話です。