7 : ThunderBird2號[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 21:25:56 ID:Qa88VBEv0 [1/3回(PC)]
友人の話 

ある夏の日、彼は高原の農道を走っていた。畑の中を一直線に伸びる農道は舗装も 
なく、ゆらゆらと陽炎をあげていた。 

遥か遠方に対向車を見つけた彼は、少し広くなった所を見つけ対向車をやり過ごす 
為にそこに停車した。しかし対向車は遥か遠方で横道に入ってしまい彼の気配りは 
無駄になってしまった。「さて、それじゃあ行くか」 と車を出そうとした時、彼は路上に 
奇妙なものが動いているのを見つけた。 

先程の対向車の曲がった横道と彼の車の丁度中間ぐらいを、左から右に変なものが 
横切り始めたのだ。およそ一つの辺が50センチはあろうかという黒い菱形。それが 
角と角を繋ぐように、いくつもいくつも繋がって左から右へひょこひょこと横切っていく。 
車がすれ違えない程に細い未舗装道路なので、一度に見えるのはせいぜい4、5個 
だが左から次から次に現れてきては道を横切る。それはあたかも巨大な蛇の脇腹に 
菱形の模様があってその蛇が道を横切っていく、そんな様子にも見えたが、 
「蛇じゃない、菱形と菱形の間はちゃんと向こう側の道路が見えたんだ。」 
およそ2、30個の菱形が横切った所で、そいつらは道を横切り終えたように見えた。 

あまりに奇妙な光景にあっけに取られていた彼だったが、急いで車を発進させた。 
2、3百メートル走ってあの奇妙なモノが横切ったと思われる所に車を止めると、彼は 
車を降りて辺りを探し回ったが、そこには普通の高原野菜の畑が広がっているばかり、 
それらしいものは何も見つからなかった。 


9 : ThunderBird2號[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 23:37:09 ID:Qa88VBEv0 [2/3回(PC)]
友人の話 

その夜、急な仕事が出来たので彼は同僚と目的地に向け高速道路を飛ばしていた。 
並行して別の高速が走るこの路線は、アップダウンが多くカーブも急な為、トラックの 
運転手には好まれていない。夜ともなれば一般車も激減し、平均速度を稼げるのだ。 
特にこの季節は冬タイヤ規制の可能性もあるので、ますます空いている。空いている 
というよりは彼ら二人の専用道となる事もしばしばだった。深夜の山中という事もあり 
車外温度計は0℃に近づいていた。この季節は凍結が一番恐ろしい。路側の切通し 
には既にあちらこちらに白いモノが積っているのがヘッドライトに照らし出されていた。 

時々眠気覚ましも兼ねて彼は交通情報を聞いていた。スタッドレスを履いているので 
タイヤ規制だけならば問題無いが、閉鎖となればどうしようもない。明朝には仕事が 
待っているのだ。その時、交通情報ラジオから流れてきたのは、 
『●●インター○○インター間で故障車が一台、路肩に駐車中』 という放送だった。 

●●インターを過ぎると割りとすぐにある峠近くにその故障車はあった。 
路肩に停まった車の周りに立った何人もが手を振っている。 
彼は一瞬、ヘッドライトに照らされたその姿を確認したが、今はまず急ぐ必要がある。 
お客様は神様です。そんな言葉が頭をよぎりながら彼はそこを通り過ぎた。停まった 
ところで素人である彼らに出来る事はあまりないのだ。ギャルでも居れば別だが、 
いや、やっぱり明日、いや数時間後に仕事をしなければいけない二人には、そんな 
余裕はない。高速道路だから非常用電話はあるし、死ぬ事はあるまい、と思った。



10 : ThunderBird2號[sage] 投稿日:2009/08/09(日) 23:37:55 ID:Qa88VBEv0 [3/3回(PC)]
(続き) 

ところが、 
○○インターに近づいた所に再び故障車が現れたのだ。さっきのセダンではなく 
いわゆるクロカンタイプの車が路肩に停まっている。傍らには JAF の車が停まり、 
作業員がクロカンに取りついて何やら作業をしていた。 

助手席で寝ている、と思っていた同僚がうめくように声をあげた。 
「なんだ、起きていたのか?」 
「さっきのラジオから起きているよ。」 
「起しちゃったか、スマンな。」 
「そんな事よりお前気付かなかったのか?」 
「今夜は2台も故障車があった。まった不注意な奴らが多いよな。」 
「いや、逆だ。故障車は2台、それにJAFの作業車1台しかいなかった。」 
「それが不味いか?」 
「そうじゃない。初めに停まっていた故障車のまわりに沢山の人がいたよな。」 
「?」 
「10人近く居たように見えなかったか?」 
「そう言えばそうかな?」 
「ただのセダン1台にそんなに人が乗っていたのか? 
お前は見えなかっただろうけど、助手席の俺には見えたんだ。 
あいつら笑顔で手を振っていたけど、みんな半袖の軽装だったんだ、この気温の中で!」 

メータパネルの外気温計は-1℃を指していた。