509 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/08/07(土) 00:07:31 ID:XkpgPnCm0 [2/7回(PC)]
Aさんが言うには、それ以来、「音」が怖くて怖くて仕方がない。 
足音や、なにかがジャンプするような音、家鳴り、水滴の音などが聞こえると、体中がふるえあがってしまう。 
いつまた自分がああなるか、自分の周りの人がいつああなってしまうかと思うと、怯えてしまってこまる、と言っていた。 

その時、住職がなんと言ったか覚えていない。 


普通に考えれば、精神的な病ではないか、ストレスへの防衛で怒りに転化したのではないか、などが考えられると思う。 

が、僕にはこの話しは、勘違いや偶然とは言い切れない。僕の母方の祖父が、似たような話をしていたことを知っているからだ。 

 
510 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/08/07(土) 00:08:37 ID:XkpgPnCm0 [3/7回(PC)]
祖父は若いころ、友達と、その恋人と三人で、恋人の故郷である、中国地方のとある県に物見遊山に行ったことがある。 
恋人の一族の墓参りを済ませ、帰ろうとしているうちに、友人が便所に行った。そして、便所から出るなり、待っていた祖父に殴りかかってきた。 
血の気の多かった祖父も即座に応戦し、両者血みどろになった(その際、目突きや首締め、金的など、普段はそんなことしない友人が、ダーティーテクニックばかりを使ってきて、その殺す気っぷりに驚いたらしい)。 
そのうち、血相を変えた土地のお婆さんが駆けてきて、二人にべたべたする水をぶっ掛けた。なにをする、と怒り心頭に発した祖父だったが、いつの間にか男たちに取り囲まれており、袋叩きにされた。 
恋人が周囲を走り回り、人を集めたものらしい。



511 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/08/07(土) 00:10:05 ID:XkpgPnCm0 [4/7回(PC)]
その後、友人がおかしくなったのは『ムタチクル様』(六太刀狂様か、無太刀狂様とでも書くのかもしれないと祖父は言っていた。ムシャクル様が転化したか、祖父が聞き間違えたか、記憶違いか)の呪いのせいであり、 
二人とも暴れているから、二人やられたのかと思った、こうするしかなかった、等を言われたらしい。 
納得いかない祖父が噛み付いたところ、友人は誰かに怨まれており、これはおそらく人為的な呪いだ、今回は払えたが、これ以上はどうすることも出来ないと言われた。 
祖父はなにか言おうとしたが、思い当たることがあった様子の友人の手前、それ以上はなにも言えなかった。 
恋人は、顔面蒼白となっていた。



512 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2010/08/07(土) 00:10:54 ID:XkpgPnCm0 [5/7回(PC)]
友人の恋人には、かつて婚約者がいた。友人は、それを知りつつ近づいて、婚約者から女性を奪い取ったプレイボーイだった。 
婚約者を奪われた男は、この村の出身だった。男は恋人を奪われたことでひどく落胆し、当時住んでいた兵庫県を引き払い、北海道に移ったらしい。 
「そして、北海道から、友人に『ムタチクル様』の呪いをかけたのではないか」とは、祖父の推測に過ぎない。 
しかし、その数年後、その友人は、恋人を殺し逮捕された。無理心中を図った、とも、発狂した、とも言われたそうだ。 



513 : おわりです[] 投稿日:2010/08/07(土) 00:13:39 ID:XkpgPnCm0 [6/7回(PC)]
祖父は、僕の母が札幌出身の父に嫁ぐことにより、北海道に移住することに、最後まで反対していた。 
また、とある県には絶対に足を踏み入れることもなかった。北海道のどこかと、中国地方に、人を呪い殺せる者が居る、と祖父は信じていた。 

Aさんは、今も生きている。