433 : ハチロー[sage] 投稿日:2012/02/03(金) 04:35:05.78 ID:j38Oqh2F0 [1/5回(PC)]

去年の8月、ダチと2人でトレーラーでアルミボート引いて、ハチロー(秋田県八郎湖)へバス釣りに行ったんですよ。4日間の予定で。 
ところが、到着前日から、凄い雨で流入河川とか濁流なんですわ。 
初日、西部やったんですけど、いまいちで、2日目から中央カンセンロとかいう、ドブみたいな所でやったんですよ。 
小雨の肌寒い中、一日中やって、そこそこ釣れました。 
夕方帰ろうとした時、川の真ん中に人が立っているのが見えたんですよ。200mくらい先に、ぼんやりと。 
夕方、結構肌寒いし、釣りとか網とかやっている風でもなく、棒みたいに突っ立っているんですよね。 
ダチと、なんか気味悪りぃなーとか言いながら、なるべく避けて、端を通るようにボートを走らせていたんですよ。 
「やべぇぞ!」 
前に座っていたダチが言いながら、止めろと、手で合図をしてくるんですよ。 
何だ?と思って見ると、さっきの突っ立っているヤツが、その時点で、グレーっぽい作業服を着ている男のように見えました、そいつが、まっすぐお風呂に入るみたいに沈んでいくんですよ。 
自殺なのか? それとも何かしていて、倒れたのか? 
助けなきゃ! 面倒な事になった・・・ 
いろいろな考えが、頭の中をグルグルと回りました。 

全開で近づいていく中、その男は、もう胸くらいまで水に浸かっていました。 
50mくらいまで近づき、こちらに背を向けた男らしい事が分かりました。 
やばい、急げ! 
「おいっ、アンタ! シッカリしろ!」 
ダチが叫んでいました。 
沈んでいく男は無反応でした。

 
434 : ハチロー[sage] 投稿日:2012/02/03(金) 04:37:10.02 ID:j38Oqh2F0 [2/5回(PC)]
・・・あれっ?・・・・・ 

ココって、そんなに深かったっけ? 
次の瞬間、サササ・・・とプロペラに砂が当り、船外機のエンジンがストップしました。 
全然浅いんですよ、そこら一帯。 
行きは岸よりを釣りしながら、流していたんで、 
そこら一帯が、サンドバー(砂地の浅瀬)になっているのに気付きませんでしたが。 
とりあえず、エンジンを上げて、エレキ(低速移動用の電動モーター)を少し水に突っ込んで男が沈んだ場所へ近づきました。 
「待て! 止めろ!!」 
「何で?」 
「ちょっと、おかしいよ。離れた方がいい・・・」 
振り返ったダチの顔は、血の気が引いてました。 
「そうだな、そうしよう。」 
ホラー映画なら、ここでエンジンがかからないのが定番ですよね。 
その通り。さっきまで動いていたエレキが全く反応しないんですよ。 

ほんの一瞬、顔を見合わせたり、今いる所の、底を見たりしている間に男は、沈んだのか、消えたのか、いなくなっていました。 
怖くて、しっかりとその辺りを見たり、周りを探したりは出来なかったです。 
ダチが焦りながら、オールで底を押してその場からボートを離すようにしたんですよ。 
俺は、少しでも深い所に出たら、速攻エンジン下げて、かける準備をしました。 
濁った水の底が見えなくなってきたところで、慌ててエンジンをかけました。 
かかれ、かかれ、頼むから、かかってくれ。 
スターターを、力いっぱい引っ張りました。 
意外にも、一発でエンジンはかかりました。 
「やったー! 早く、このクサレどぶ川から脱出しようぜ。」 
ダチが、強がっていましたが、顔面蒼白でした。もちろん、俺もです。