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この場所に来ることによって、小さなころ褒められた才能が復活するかもしれないと考えていたからです。 

私は、四角いブロックを積み重ねて封鎖されたトンネルの入り口の前に立ち、ブロックを登って行きました。 

上の方のわずかな隙間から中に入ろうと試みたのです。 

先輩たちが、止めましたが、私は中に入る直前彼らの方を振り向かずに「幽霊なんていませんよ、見えるなんて言う人は統合失調症です」といつもの様に言いました。 

トンネルの中はひんやりとしていて、ブロックは苔で滑りやすくなっていました。 

私は奥まで行ってみよう、と考えて、少し怖くなりました。 

女の人の声が聞こえた気がしたからです。 

しかし、耳をすませればなんてことはありません。 
ただの水が滴っている音です。 

「こんな勘違いから噂はうまれるんだろうな」と思いながら、トンネルの中ほどまで行ったところで私は引き返すことにしました。 

これ以上進んでも何かあるとは思えなくなってしまったのです。 

結局私は無事にトンネルを脱出し、帰路に着きました。 

私はこの一件で妙な自身を持つ様になっていました。 
「小さなころ、幽霊が見えたのはきっと妄想なんだ。そして、その一つ一つに辻褄があっていたのは、周りの大人(幼稚園に1人凄く霊感があるという先生がいました)の優しさなんだ。妄想と受け入れることが出来た私は、未だに自分に霊感があると信じている人達とは違うんだ」 

といった感じにです。 

そんな感じで月日は流れ、たしか10月の終わりか、11月の始め辺りのことだったと思います。 

私は、また心霊スポットに誘われたのです。 
その場所というのが、心霊スポットファンの人達が言うには、私が入ったトンネルよりもヤバいところらしいのです。 

多分、全国的に知名度でもそのトンネルの方が上でしょうし、私も初めて聞く名前の心霊スポットでした。 

私はすぐに参加の表明をして、その日のためにネットで色々と調べたりしていました。 

サークルのメンバーでドライブをした後、その心霊スポットに行く、という流れでした。 

例の霊感のある先輩とはそのときかなり仲良くなっていて、そのヤバいところについて色々と話を聞きました。 

彼は何度もそこへ行ったことがある様でしたし、他にも行ったことのあるメンバーが場所を確認するために私たちを駐車場に残し、歩いていってしまいました。 

そのときは確か午前一時ごろだったと思います。 
私は、ちょうど丑三つ時にそこを訪れることができるのではないか、とワクワクしていたのですが、不思議なことに、先輩達は戻ってきません。 

駐車場に残った組の先輩が電話をかけてみると、「見つからない」らしいのです。 

結局ズルズルと時間だけが過ぎて行き、彼らから、見つかった、という連絡が入ったのは、午前三時ごろでした。 

電話の誘導に従い、私たちは車を走らせました。 

目的地に近づくにつれ、私は、「ああ、確かにこりゃやばい」と感じていました 

絵に描いた様な同和地区だったからです。 

私たちの車が走る道路の横を幅が狭い川が流れていて、川の向こう側にトタン板の家が並んでいました。 

その家並みが途切れた所に石の橋がかけられていて、その上に先輩達が立っていました。 
私たちは橋を渡り、大きめの空き地に車を停めました。 

先輩が「ごめん、なんか場所が思い出せなくてさw」と笑って、山の中へと続く坂を指差しました。 

「じゃあ、あの坂を登ろうか」 

私は、おいおい、と思いながら先輩に続きます。 
正直かなり眠かったですが、着くまでに夜明けが来ることを何よりも心配していました。 

五人は横に並んで通れるぐらいの道が突然途絶え、一人が通れるぐらいの道が姿を現しました。 

先輩が「あの道だけどさ、最初に行きたい人達は?」といいました。 
正直かなり不気味でしたので、皆手を上げません。 

しかし、私は日が昇ってから心霊スポットに行くなんてことは、絶対に嫌だったので、1番に手を上げました。 
すると、私の隣にいた美人でギャルな先輩も手を上げます。 

彼女も霊感があるらしく、日頃は「霊感があるのに、心霊スポットに行くなんて信じられない」と言って、心霊スポットに行く人を批判していたのですが、何故か今回は 
参加してみる気になったそうです。 

すると、その先輩のことが好きな他の先輩も手を上げ、それに続き、疲れたから早く終わらせたいと言いながらまた二人の女の先輩が手を上げました。 
男が少ない、という理由で、もう一人、男前の先輩が手を上げて、私たちは出発しました。 

私は1番年下ですので、1番後ろに付きます。 

少し進むと、後ろから、前述した心霊スポット巡りが趣味の先輩が追いかけてきました。 

私が、どうしたんですか?と訊くと、彼は、何となく嫌な気がして、と返しました。