雰囲気だけだったら夏に行ったトンネルの数倍怖かったです。
腐った枯葉を踏む度に嫌な感じの感触がしました。
時々、お地蔵様が並んでいて、わたしはなんとなく、そのお地蔵様と顔を合わせない様に心がけていました。
しばらく進むと、先頭を歩いていた男前の先輩が、声をあげました。
「もしかして、これ?ちょっと降りてみる」
私が他の先輩達の肩越しに先をみると、洞穴の様な洞窟がそこにあり、石造りの階段が下に続いていました。
皆、続々と中に入って行きます。
私もそれに続こうとしたとき、左手の茂みから女の人の叫び声が聴こえました。
流石に少し驚きましたが、その声が友人のSに似ていたこともあり、後ろにいた先輩に「今のSの声でしたよね?何かあったんですかね?」と声をかけました。
先輩は、さあ、声は聴こえたけど、と呟いて首を傾げます。
私は残った仲間達を心配しながら、階段を降りて行きます。
中程まで降りて、後ろを見ると、先輩が降りてきません。
私が「先輩は行かないんですか?」と言うと彼は、お前が降りたら行くよ、多分そっちの方が良い、と返して、私の右斜め前方を顎で指しました。
わたしも反射的にその方向を睨んでみますが、何もありません。
内心、やれやれ、と思いながら、私は階段を降り切りました。
内部は中々に広く、お地蔵様が左右に沢山、置いてありました。
私は、そのお地蔵様の首にかけられている赤い布を見て、「ここに来るまでにあった地蔵にはかけられてなかったなあ、あれをかけられているお地蔵様と掛けられていないお地蔵様は何が違うんだろう」といったことを考えていました。
すると、階段の上にいた先輩がいつのまにか降りて来ていて、「あれ、○○(男前の先輩)は?」と声をあげました。
周りを見渡すと、確かにいません、少しゾクリとした瞬間、人1人が横になってギリギリ通れるぐらいの狭さの隙間から男前の先輩が出てきました。
「駄目だ、奥は行き止まりだったよ。これだけなの?ここ」
と、心霊スポット巡り先輩に訊きました。
彼は、うん、と言って、そろそろ帰るか、と提案しました。
私は幽霊をみることは出来ませんでしたが、雰囲気はかなり楽しめたのでそこそこ満足していました。
洞穴をでたときに、私が、Sの叫び声が聴こえた気がして、心配ですから少し急ぎませんか、と言うと、皆少し早足で来た道を戻り始めました。
しかし、残っていた皆の元に辿り着いたとき、私の予想と反して、皆はワイワイと談笑をしていました。
そして、心霊スポット巡り先輩に「どう?w出た?w」なんて訊いていました。
私が一緒に行った先輩達に私の聞き間違えだったみたいです、と謝っていると、残っていた組がゾロゾロと一列になって、洞穴への道を進み始めました。
私たちは七人で行ったのに対し、彼らは二十人程
余りに不公平ではないか、と私が笑いながら言うと、やはり、皆七人だけでその場に留まるのが怖かったようで、いつのまにか、円を作っていました。
私の右隣に心霊スポット巡り先輩、その隣にギャルの先輩のことが好きな先輩、その隣にギャルの先輩、その隣に2人組の先輩、その隣に、男前の先輩、そして、その右隣に私、といった形の円でした。
皆で、怖かった、だのなんだの話していると、急に右隣の心霊スポット巡り先輩が黙り込んで、2人組の先輩を指で指しました。
一斉に皆が静まりかえります。
すると、心霊スポット巡り先輩は、2人組に対して、指でギャル先輩の方に寄る様にジェスチャーをしました。
言い忘れていましたが、心霊スポット巡り先輩とギャル先輩はお互いに霊が見えることを認め合っています。
2人組の内、ギャル先輩の方に近かったエロエロな先輩はすっと、ギャル先輩に寄ったのですが、もう一人のロリ先輩は何故か、体育座りで、つま先だけでジャンプする様にピョン、ピョン、と心霊スポット巡り先輩の方に寄って来ました。
心霊スポット巡り先輩は「なんで俺の方に来るんだw」と笑いましたが、男前先輩が、いるの?と言うと、
「二人の後ろに赤いおっさんがいた。ギャルの方に行っていれば多分大丈夫だったのに、こいつが俺の方に来るから。とりあえず皆、下向け」と返しました。
皆が下を向きましたが、私は何だか嫌な気がして、ロリ先輩の顔をチラリと見てしまいました。
すると、彼女は歯をカチカチ言わせながら震えています。
最初は怯えているのかと思いましたが、彼女の顔面が蒼白で目が虚ろなのを確認して、私はつい、心霊スポット巡り先輩に「先輩、ロリさんが、何か大変ですって!」と声を出してしまいました。
その言葉で、初めて先輩もロリ先輩の異変に気づいたらしく、小声で、ロリ先輩に話しかけました。
「もしかして、見えた?」
ロリ先輩は、頷いて、赤いおじさんがいた、と呟きました。
そして、ここにはもう居たくない。すぐにでも帰りたい、と続けました。
ロリ先輩はいつも元気でさばさばした人だったので、そんな姿を見た私は、「あれ?これ結構ヤバいかも」と考えていました。
ギャル先輩のことが好きな先輩が坂を降りることを提案し、心霊スポット巡り先輩が、仕方ない、といった感じで立ち上がりました。
足取りのおぼつかないロリ先輩を支えながら、坂を降りていく私たち。
いつ、例の赤いおじさんが姿を現すかわからないので、私はずっと緊張していました。
そして、坂の大きなカーブを曲がり、トタン板の家が見え、全員が安堵のため息を吐いたとき、トタン板家の方から犬が尋常ではないほど激しく吠えはじめたのです。
一瞬ドキリとしましたが、時間は既に四時を回ってましたので、新聞配達のお兄さんに吠える馬鹿犬もいたもんだ、と自分を納得させつつ足を進めます。
十メートル程進んだでしょうか、皆は完全に安心して、ギャル先輩のことが好きな先輩なんて冗談を言ったりしていました。
すると、突然、唸り声が聴こえたのです。
私は咄嗟に「ヤバい!野犬だ!狂犬病かもしれない!」と頭に浮かんで、サッと腰を低くして、左手で皆に止まる様に指示を出し、ゆっくりと前に進みました。
まだ辺りは暗かったので、近づいて来る犬を探そうとしたのです。
しかし、両目とも視力2の私の目を持ってしても犬は見つかりません。
まだ唸り声は聴こえてきます。
そのとき、私は背筋が凍る様なことに気がつきました。
十メートル程前から吠えている犬はそのときも吠え続けていたのです。
そして、その吠え声に重なる様に唸り声は聴こえてきます。
明らかに犬の吠え声の方が遠い、そして唸り声はかなり近い
これは犬の声じゃない。
この声は・・・人間?
そう気がついたとき、私は逃げるために後ろを向きました。
脳をフル回転させ、唸り声の方にダッシュで逃げるか、それともまた、赤いおっさんの方に逃げるか・・・
考えるまでもありませんでした
というのも、後ろを向いたとき既に心霊スポット巡り先輩以外の先輩達は坂を駆け上がっていて、心霊スポット巡り先輩が、「速く逃げるぞ!」と叫んだからです。
心霊スポット巡り先輩と坂を駆け上がると、ちょうど下山してきていた後発隊のメンバーの前で泣きながら腰を抜かしているギャル先輩やエロ先輩がいました。
私は普段煙草を吸わないのですが、心霊スポット巡り先輩から青いピースという煙草を奪い取り、火を付けました。
当然の様にむせましたが、少し安心した気がしました。
その後、20人以上で駆け上がった坂を引き返し、(後発隊の皆はまるで信じてくれませんでしたが)なぜか、あの犬もまったく吠えていませんでした。
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口リ先輩
ギャル先輩
表現がオモロイな