020horror0523_TP_V (1)

ギャル先輩に話しかけると、彼女は足を掴まれたみたい、と弱く笑って、私にヒールを履いた足を見せてくれました。 
彼女のアキレス腱の辺りには赤く、手の形で痣が出来ていました。 

私は、心霊スポット巡り先輩に統合失調症なんて言ってごめんなさい、と謝りました。 

「あんな声、初めて聴きましたよ。地獄からの声っていうか、なんていうか。霊って本当にいるのかもしれませんね」 
と私がいうと、彼は笑いながら、「怒ってたね、あいつ」 
と返しました。 

空き地に戻り、車に乗り込みましたが、私の車に乗っていた私以外の人達は皆、後発隊のメンバーで、私の話をまるで信じませんでした。 
不貞腐れて、助手席からトタン板の家並みを見ていると、車の左斜め前にあった家と家の間の隙間からお洒落をした髪の長い女性がすごい勢いで飛び出て来たのです。
 
そして、彼女はずっと、立ったまま、私たちを見送り、私と運転席に座っていた人は同時に「凄く気持ち悪いな」という感想を洩らしました。 
時間は五時ごろだったはずです。 
その後、私達は無事大学に帰り着き、解散、となったのですが当時一人暮らしをしていた私とギャル先輩のことが好きな先輩の家が近いこともあって 
先輩から怖いから今日は一緒にいてくれ、と頼まれました。 

私は、泊まることは出来ませんが、夜までなら良いですよ、とその頼みに応じました。 
夜の10時頃まで、先輩とウイイレをしたり、L4Dをしたりして遊びました。 

先輩の家を出て、馬鹿な私は家の近くのレンタルビデオショップに行き、DVDを二本借りました。 

その帰り道、後ろから男の人が着いて来ていることに気がついたのです。 

その男性の鼻息が妙に荒い気がして、怖くなった私は、ギャル先輩のことが好きな先輩に電話をかけました。 

「お疲れ様です」 

「どうした?」 

「いえ、家に着くまで怖いので電話に付き合ってくださいな」 

「いいよ」 

と言った感じで会話を続け、家の前まで来た私はお礼を言って、電話を切りました。 
私の部屋は三階でしたので、階段を使って上がり、部屋の鍵を開けて、お腹が空いていたので、冷蔵庫から適当な物を出し、フライパンを加熱し始めました。 

すると、また先輩から電話です。 

「どうしました?もしかして怖いんですか?w」 

「いや、そのさあ、さっきから気になってたんだけど、お前、今、一人だよな?」 

「ええ、先輩の家を出てからDVDを借りに行っただけなので完全に一人でしたよ?」 

「やっぱり?これ嘘や冗談じゃないんだけどな?お前の声に重なって女の声が聞こえるんだよ、ボソボソボソボソさあ」 

フライパンの上のバターの音以外何も聞こえなくなりました。 

「いやいや、またまたご冗談をw」 

無理して強がる私に、先輩は重く伝えます。 
「いや、本当なんだって。今だって聴こえてるし、お前、今家だよな?」 

「ええ、家です」 
この時は完全に声が震えていました。 

結局、すぐに家を出ることにして、近くのコンビニで先輩と待ち合わせることにしました。 
先輩がコンビニの駐車場に来て、私は思い切り頭をさげます。 

先輩は、俺の聞き間違えかもしれないから、他の奴にも確認とってみろよ、と言ってくれたので、クラスの友人に電話をかけました。 
「もしもし、今大丈夫?」 

「大丈夫、大丈夫。あれ?なに?宴会でもやってんの?」 

「え?どうして?」 

「いや、だって後ろで声が」 

そこまで聞いたところで、私は電話を切りました。 
そして自販機に寄りかかり、冷静になってみると、部屋の電気と火を止めてないことに気がつきました。 

ですので、先輩に頼み込み、部屋に着いて来てもらうことになりました。 
私は恐る恐る、部屋のドアを開けて、電気を切り、火を止めました。 

そして、即座に部屋を出て、さてどうするか、と思った時に、先輩が、心霊スポット巡り先輩に電話してみろよ、と提案したのです。 
それは名案でした。 

私は即座に電話をかけると、先輩はすぐに出てくれました。 
「もしもし、お疲れ様です」 

「おう、お疲れ」 

「あの、突然ですけど、私の後ろで声、聴こえますか?」 

私は黙り込みます。私の周りで喋っている人はいませんし、車も通っていません。 
あえて女の声、とは言わない様にしておきました。

「おい、**(私)」 

「はい」 

「女の声が聞こえた。ボソボソ言ってる」 
私は大きくため息を吐きました。 

「先輩、ありがとうございます。それじゃあ」 

「うん、気をつけろよ」 

そういって電話を切った私は部屋の前の通路で先輩と話し合い、ギャル先輩の家に泊まることにしました。 
そう決まった時に私の携帯がなりました。 

心霊スポット巡り先輩です。 
私が電話に出ると、先輩は震えた声で「お前な、さっき、それじゃあって言った後、何か喋ったか?」といってきます。 

私も先輩も喋っていないので、いいえ、と返事をすると、電話口で先輩はこう言いました。 

「電話切ろうとしたら、男の声で『もしもし』って聞こえたんだけど」 
もう私はパニックです。 

女だけならまだしも男までいるなんて。 

「どうしたら良いんですか!?」 

「わからん!俺はそんなときドデカイペットボトルの水を飲みながら筋トレをする!とにかく、ビビってると思われるな。そうだ、お前、DIOのマネしろ」

「は?」 

「いや、DIOだよDIO。ジョジョのさ」 

私はマンションの通路で本気のDIOの真似をしました。 

勿論大声で。 

「これで良いでしょうか?」 

「多分良いんじゃない?面白かったし、俺も今から水抱えて寝るから。気をつけろよ」 
先輩の無責任さに苛々しながら、ギャル先輩の家に向かう途中、先輩の携帯でギャル先輩にも連絡を入れ、彼女も声が聞こえると私に言いました。 

その声事件はそれから数日間も続くのですが、何時の間にかその声も聞こえなくなりました。