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彼の住んでいた村には、足を踏み入れてはならない山があった。
ある時、村でも鼻つまみ的な存在の者数名が、この山を荒らしたそうだ。

人が普段入らないだけに、獲物が豊富だったらしい。
ならず者たちは他の村人を臆病だと馬鹿にしながら、意気揚々と村に帰ってきた。
障りがなければいいがと、村人は囁きあった。

それから一週間の内に、山を荒らした者たちは皆、次々に死んでしまった。
死因等は明らかにされなかったが、家族や焼き場の人の口からは不気味な噂が
聞こえ漏れてきた。

遺体の一杯に開いた口から、湿った黒い土がこぼれていたというのだ。
どうやら腹の中から口の中まで、パンパンに濡れ土が詰め込まれていたらしい。

亡骸は速やかに焼かれてしまい、噂の嘘真は誰にもわからなくなった。
それから村が廃れるまで、敢えてその山に入ろうとする者はいなかったという。