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若い頃、学校仲間で廃墟と化した寺に泊りに行った。 

戦国時代の武将一族が眠る菩提寺で墓場と本堂以外にも建物がある大きな寺だった。 
古い本堂は傾き敷地半分位は水溜まりに浸かっていた。 
本堂の奥が武将一族の墓場。本堂向かいにも縦長の建物。 

外面が全て上部網がかりの格子戸。中は土間で、中心を貫く通路の両脇に何故か墓が並ぶ。 

僕たちは本堂前にテントを張って騒いだ。 
深夜ふざけて懐中電灯で縦長の建物を照らすと網越しに複数の人影。 
僕たちは三人で確認しに建物に近づいた。 

懐中電灯の光を当てると青いシャツを着た若い男が墓の通路を横切り消えるのが網越しに見えた。 
通路の奥には脚だけの女性が三人立っていた。 

水城君は呆然と立ち尽くし凝視している。僕ともうひとりは彼を引っ張って逃げだした。 
すぐにテントを畳んで自転車で逃げ出した。 
振り返ると山道を白い脚が三人走って追いかけてくるのが見えた。 

僕は怖くて大声を挙げながらペダルをふんだ。 

脚は途中から見えなくなったが恐ろしさは無くならなかった。 
翌日両親に話すと数日後うちのお寺さんに三人で連れられて行き 
住職からお祓いみたいのをされて少し怒られた。 

無闇にアヤシイモノには近づくなと諭された。アヤシイモノにはアヤシイだけの訳があるのだと。 
それ以来僕は心霊スポットには近づかない。 

故郷の両親もすでに亡く兄夫婦一家が跡をとっている。 

僕がたまに帰郷すると三人は酒を飲みながらあの日の話をする。 
寺は結局、墓場を残して建物は取り壊されたそうだ。 
だが僕たちは未だに見に行っていない。