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4時頃、だれかに話しかけられて起こされた。話しているのは彼だった。 
俺もう帰らないといけない。俺帰らないと。そう言っていた。あんなことがあったため、驚いたがしきりに帰りたがるので俺は全員を起こして彼を説得しようとした。 

全員で引き止めたが、彼は帰らないと、としか言わなかった。結局らちがあかず不安ではあったが家についたら必ず電話するようにと念をおして、1人が原付を貸して彼を帰らせた。 

凄く不安だったが、およそ1時間後に電話が入り無事家についたと連絡がきた。原付も自分のものと途中で乗り換えたのだという。俺らは心の底から安堵し、いつの間にかまた眠ってしまっていた。

朝10時過ぎ頃電話で起こされた。彼からだったので嫌な予感がしたが、出ると女性の声だった。 
電話してきたのは彼の母親で泣きじゃくりながら彼が死んだと言っていた。 
朝彼の原付があったので帰ってきたのかと思い部屋に入ると死んでいたのだそうだ。 

驚いて皆を起こし、住所をききすぐさま親の車で彼の家に向かった。家につくと警察がいた。彼の母親が外にでてきてくれて、中にいれてくれようとしたが警察にとめられた。昨晩一緒にいた旨を伝えると余計に見せることはできないと言われた。 
母親とも引き離され、意味が分からないまま外で待っていると警察署にきてほしいと言われた。

結局パトカーと俺の車に分けられて警察署につれていかれた。運転は警官がしてくれた。 

取り調べ室のような所に4人座らされ待っていると、中年の男性が写真をもって入ってきてこういった。 
相当の衝撃をうけるかもしれない。怖い人は見なくていい。 
そして写真をみせられた。全員が思わず見てしまったが、本当に見ていた全員が驚きのあまり立ち上がった。 

写真には仰向けになり、天井に手を突き出したまま死んでいる彼の姿が映っていた。目は見開き涙を流し口からは血が混じった涎がたれていた。手は限界まで開いており血の気がひいて真っ白だった。

中年の刑事がすぐにポケットに写真をなおして彼の様子を説明してくれた。 

写真では分からなかったが、彼は尿も便も漏らしており、白目も真っ赤なほど充血していた。死後硬直では考えられないほど、手と腕が硬直していた。また肩が上から無理やり引っ張られたように両方抜けていたという。 
一番覚えていることが、肩が抜けているのになぜ手が天井を向いたままなのか全く分からないと呟いていたことだ。 

俺らは震えながら昨日のことを話した。

中年男性は黙ったまま最後まで聞いてくれた。俺らの話が終わると一言田んぼの場所とはじめに彼の原付の調子が悪くなった場所はどこかということだけ聞いてきた。昨晩彼と一緒だったうちの1人が地図で場所を教えると、男性はそこかぁと呟いた。 

そのあと簡単な調書のようなものを取られそれぞれ家に返された。原付も警察が回収してくれたようだった。 

後日代表して俺が父親と彼の両親に話をしに行った。向こうの両親も警察から事情を聞いていたらしく、ただただ静かに泣いているだけだった。

結局司法解剖は彼の両親が拒否したので、彼の死因は心筋梗塞だということになった。 

後日彼の葬式があり、父親と友人と参列した。焼香するために彼の遺影の前までくると棺桶がなかった。そのまま焼香を終えたが、あの時帰らさなければという後悔がすごくあり、なんとしても彼に謝りたかったので思い切って彼の両親にきいてみた。 

すると彼の棺桶は祭壇の裏にあるのだという。会わせてほしいとお願いをするも断られた。無礼だとは思ったがお願いし続けると渋々了承してくれた。

葬式が終わるまで無理だと言われたため、終わるまで全員で待っていた。やがて式が終わり彼の両親に呼ばれ行ってみるとそこには棺桶ではなく箱があった。 
高さ2mほどで横も2mほど、幅は棺桶と変わらない幅だった。両開きの扉が側面についていた。装飾も一切なくただの木の箱にみえた。 
俺らが立ち尽くしていると、彼の両親が正直私達でも見るのが辛い、見る覚悟がある方だけ息子を見てやって下さいと言った。 

正直足が震えていたが、嫌な予感がしつつも俺は両開きの扉をあけた。 
予想通り彼はあの写真のままの姿でそこにいた。