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ある日俺はバイトのシフトが入っていたので、大学から直でバイト先に向かった。 
 
そしていつも通り仕事をしていると、店の外にチラッとなんか変な物が見えた。 
 
色は白に近い灰色、人の形をしているのだが胴体や手足頭はあるけど他に体の凹凸みたいな物が何も無くのっぺりしている。服を着ているようにも見えないけれど、 
 
色の事もあって全裸という感じでも無さそう、そんな感じの奇妙な物体が店の前を通り過ぎていく。 
 
「うわなんだあれ」と思った俺は、まだ客も少ない時間だった事もあり外へ 
 
出てそれを確認してみると、やはり人のような形はしているが人では無さそうで、 
 
自分の真横を通り過ぎたので顔も見えたのだが、頭はあるけどのっぺらぼうの 
 
ように目鼻口も髪の毛も何もない。 
 
かといって前身タイツを着ているような感じでもない。 

俺は急いで店の中に戻り、丁度近くにいた店長に「なんかすげーのいるんすけど!」 
 
と店長を外に連れ出して見せたのだが、

どうも店長には見えていないらしく「お前何言ってんだ?」的な目で見られてしまった。 
 
というより、こんなものが外を歩いていたらみんな注目するはずなのだが、

そもそも騒いでいるのは俺だけっぽく、どうやらその場の他の人には見えていないようだった。

その後もバイトの何人かに聞いてみたのだが、やはり俺以外には見えていないらしく、

そのうち俺がおかしくなったと思われてしまったのだろう、

店長が「お前最近レポート忙しくて大変だとか言ってたよな?別にクビにするとかじゃないから、暫らく休みを取るか?」とまで言われてかなり心配されてしまった。 

このままだと俺は頭のおかしいやつだと思われてしまう。そもそもあれは見る限り 
 
こっちに危害を加えてくるような物でも無さそうだし、それにこっちに干渉してくる様子もない。

もしかしたら本当に俺が幻覚かなにかを見ているだけなのかもしれないので、とりあえずは「見えても気にしない」ようにする事にし、

店長その他には「ただの冗談だから気にしないで」的な事を言ってお茶を濁してその場は納めた。 

それから数日、俺は「見えないふり」を続け気にしないようにしていたのだが、 
 
俺とは違う曜日にバイトに入っている高校生のA君が、バイトの終る時間にやってきてこう言い出した。 
 
「○○さん、なんか変な物が見えるって言ってたらしいけど、それってどんなのだったんですか?」と。 

「今更蒸し返すのかよw」「なにこれ?新手の嫌がらせ?」と思った俺は苦笑いしながら 
 
「あーあれ冗談だから、あんまマジにならんでくれよ」と返すと、

A君は真面目な顔で「いや、おかしなやつだと思われるから黙ってたんだけど、実は俺も数日前から変な人みたいなの見えるんですけど…」と言い出した。 
 
嘘をついている様子もなく、話を聞いてみると細部まで俺の見た物と同じ、更にA君が言うにはどうもあれはただ道を歩いているのではなく、特定の人の後をついて行っているようだとの事だった。 

ちなみに、これも俺は気付いていなかったのだが、実はあの人のようなものは1時間に1人か2人くらいは店の前を通っているらしい、

1日に1人か2人くらいだと思っていたが、結構な頻度のようだ。 
 
その後もA君と色々話した結果、やっぱあれが何なのか気になるので、2人とも学校もバイトも休みの日を使って後をつけてみようということになった。 

当日の午前中、2人でバイト先の近くの曲がり角で待機していると、結構直ぐにそれと出くわした。 
 
どうやら今回は20代後半くらいの女の人の後をつけているらしい。 
 
ただし、なんか今回のそれは普段とちょっと様子が違った。 
 
俺もA君も、今まで見たものはどれも白っぽい灰色で人の形をしている何かなのだが、 
 
今回のそれは色が明らかに黒みがかっていて、更に体の一部が欠損している。 
 
具体的には右肩からわき腹にかけての部分が円形に抉れている。 
 
人ならばその時点で即死レベルの欠損だ。 

A君が「なんだあれ、キモ!」と言うと、言葉とは裏腹にさっさと後をつけだした。 
 
そして俺に「○○さん、今まであんなのみたことあります?」と聞いてくるので、 
 
俺は「いや、普通の白っぽいのしか見た事無い」と返すと、なんか嫌な予感がしたが気のせいだと自分を納得させて慌ててあとをつけた。 

10分ほど歩くとある場所にたどり着いた。 
 
そこは某テレビ局のビル。 
 
女の人は後ろの人のような物体と一緒に正面玄関からビルの中に入っていったのだが、俺とA君はビルを見て絶句してしまった。 
 
なんとビルの周りに例の人のような物体が相当な数いる、10とか20ではない、見た感じ300とか400とかいる。 
 
1日に何度も見かけるのであれは1人ではないとは思っていたが、まさかこんなに多いとは思わなかった、

それはA君も同じらしく同じく絶句している。