b3ba6a4f.jpg

祖父が自営業を山の近くでしていたんだけど、
たまーに、山の方に入って祖母、母、俺でワラビを採りに行ってた。
これを焼いて?茹でて?マヨネーズで食べると美味い。

その時は祖母と二人で採ってたんだけど、
俺だけちょこっと山の奥に入り過ぎたのね。
っても、俺も小学生の高学年だから何が危険とかの分別はついてる。

で奥に進んでくと、綺麗な川が流れてて
その周囲の割と平たい岩の一つにワラビが大量に置かれてあった。
誰かのかな?と思ったけど、付近に誰もいない。

そしたら大きなサルみたいなのが現れたんだよ。
身体にまだらに苔が生えてて、不思議と威厳?を感じた。

そいつがジッと俺の方を見てくるのね。
警戒してるのかな?と思ったけど、どことなく来いって
誘われてる気がした。ワラビやるぞーみたいな感じで。

まあ、俺は怖くなってすぐに逃げたけどな。

それで祖母に話をしたんだよ。
そしたら「まるまる様が目をかけてくれたんだね」って
本当に、祖母はまるまる様って言ってた。

これは本当の名前ではなくて、
本当の名前は言ったら駄目って教えてくれた。
「名前には力があって、言うだけでその人から持っていく」
そう言って、祖母は地面にその名前を書いてくれた。

書くだけでも割と危険らしいけど、
ちゃんと、後の人に伝えないとねって言ってた。
名前なんだけど、不思議と発音できないんだよなあ。

カタカタなんだけど日本語っぽくないと言うか、
どう発音していいのかがわからん?感じかな。
山は別に霊山とかでなくて、ごくごく普通の山。

祖母はどこの山に出てくる。姿も時に違うけど、
欲しいものをくれる、身体が大きい、苔がはえてる。
とは言ってた。祖母の祖父が出会ってるらしい。

そのあと、祖母が笑顔で
「貰わなくて良かったね。タダより怖いものはないから」
が一番怖かった。