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子供の頃に海外で少し生活した事があり、その頃に隣の家のアリス(仮名)という子と友達になった。 
言葉は通じなかったけど、よく仲良く遊んでいた記憶がある。 
1年くらいで日本に戻り、日本の小学校では懐かしい顔もあれば覚えのない名前の女の子が凄く親しげに近付いてきたりして、環境の変化にちょっとついていけないこともあった。子供だしそんな事もあるんだろう。 
アリスからは数回手紙が届いたが、英語なので親に読んでもらっていた。あの頃は楽しかったねとか、また遊びたいなとか、日本はとても楽しそうとかそういった手紙だった。 

中学生になった頃、アリスが日本に遊びに来るという手紙が届いた。 
だけどアリスは来なかった。

事故で亡くなったとアリスのご両親から悲痛な連絡が来た。家族ぐるみで仲良くしていたので、葬式には行けなかったが後日アリスのお墓に挨拶に行った。 
急だったので2日だけアリス家へ泊まることになり、その時にアルバムを見せてもらったが、小学生の頃の私達が仲良く遊んでいるものばかりで、色々思い出してそこで初めて涙が出た。 
最近の写真もあったが、日本に憧れていたようで着物の写真や、和傘を持っていたり、友達とサムライの格闘ゲームを遊ぶ姿だったり、色々だった。 

日本へ帰る前日の深夜、突然目が覚めた。 
トイレに行きたいわけでもないのに眠気が無く、シーンとしていて真っ暗で、なんか不思議な時間だった。 
アリスの部屋はまだそのままで生活感も失われて無く、そんな部屋で寝ていたのが今では思い出として本当にありがたかった。 
多分1時間くらいそうしていた後にウトウトし始めたけど、そこで気が付いた。 

部屋の入り口のすぐ前に女の子がいた。アリスだ。 

「幽霊だ、怖い」、そう感じたのは少しで、アリスは昔のように笑顔で床に敷いてあった畳模様のマットに座っていた。 
夢うつつなのは解っていたが、正直これが現実なのか夢なのか解らずベッドから出てマットに座った。 
ニコニコしているだけでもちろん会話なんてなく、私もただ座っていた。そしてその内マットの上で寝てしまった。 
朝にアリスの母に起こされたが、寝ていたのはマットの上だった。 

どうしてこんなとこで?と聞かれ、 
昨夜の事を話すとアリスのご両親は大層喜んで、帰る前にもう一度お墓に寄っていってとせがまれた。 

帰りの便には時間があったらしいので、2時間ほど予定を遅らせて皆でお参りしてから荷物を取りにアリスの家へ寄り、そこでテレビでニュースになっていた事件に皆が仰天した。 
予定していた時間に乗るバスがジャックされ、死傷者6名との事だった。 
うちの両親は時間を遅らせて良かったと安堵していただけだったが、アリスの両親はきっとアリスが危険を知らせてくれたのだと泣きながら見送ってくれた。

日本に戻り、いつもの日常になりすっかり忘れた頃。アリスからの手紙が届いた。 

アリスの部屋を片付けていた時に見つかったそうで、書きかけの内容のようだった。 
読んで貰うと、アリスが日本に行くのは○○(私の名前)が危険だから守りに行くという事が書いてあった。 
親は、日本にくる理由として私に会うための照れ隠しじゃないかと笑っていたが、正直笑えなかった。 

この手紙を知るまでに、私が事故に巻き込まれそうになる事が何度かあった…。かすり傷程度の接触事故などもあった。 
それらが起きた頃に、夢でだけどアリスが現れた。夢の中で黒い煙が充満する中に彼女が私に向かって叫んでいたが、言葉なんて解らないし声がそもそも無かった気がする。その内彼女が黒いモヤを手でパタパタと散らせて消えた。 
当時変な夢だなと思っていたけど、大事になってないのはもしかして本当に護られているのかな、と思った。 

霊感なんてものはないし何かを感じることも全くない自分には解らないが、事故は不注意や不運と言うが、それ以外の運命的な何かがあるとは思っている。 
自転車で車に突っ込まれて無傷だったり、バイクの時は無謀に飛び出した車に衝突して吹っ飛んでも打撲や捻挫程度で済んだり、奇跡なんて言葉は陳腐だけど、何かがあるのだとは思うようになった。 
アリスと遊んだのはたった1年程度だけど、彼女はその後も私の事を気にかけてくれて、私のために日本にまで来てくれると思ってくれた彼女に感謝する。亡くなったのは本当に残念だったけど。 
霊感をウリにする人が守護霊というものが見えるのなら、是非見て欲しい、彼女が居たりするのかを。