そこの家族が皆出掛けた後の時間帯になると家と塀の間の暗い隙間からおじさんが出てくる
いつも浮浪者みたいな汚い格好で髪も髭もボーボー、ニヤニヤしながら歌を歌っていた
だいたい家の前の駐車場で何かしているか、ボロボロの自転車で蛇行しながら出掛けていく
近所の子供達の間では格好のネタになっていて、自転車で追いかけられたとか弓を持ち歩いてるとか子供を食べるとか、有り得ないような噂も広まっていて
いつしか「人喰いおじさん」という渾名が付いた
大人になってみれば何てことはなく、そこの家の旦那さんの知的障害のある弟で、奥さんが同居を拒否したので裏の離れに住ませていたというだけのこと
もう十年位前に亡くなって、その家も引っ越してしまった
でも「人喰いおじさん」という渾名になったのには一応子供なりの理由がある
時々そのおじさんは物干しに鳥とかウサギの死骸を吊るしていた
子供の間では食べてるんだよ!って言われてたけど、実際何のためだったかはわからない
しかも白い飼う用のウサギだったんだ
どこから調達してたのか考えるとほんのり怖い
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