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港のあるド田舎出身なもんで、遊ぶ場所は山麓の駐車場か、敷地ばっかり広い公園か、海か神社かって感じの小学生時代を過ごしてた
全校生徒は20人 近所の子供は年上年下合わせて4人だけ
都合が合わなきゃ1人で探検して虫取ったり魚釣ったりして遊んでたのよ

徒歩数分の所に、無人の小さい八幡さんがあった
神社の木にセミの抜け殻がよくくっ付いてたから、1人の時はよく取りにいってた
ある日抜け殻探しに八幡さんに入ると、境内の脇にある飲み水が出るところに、甚平っぽい服?の若い兄ちゃんがいた
服はくすんだ青みたいな色
兄ちゃんに「何してるの?」と言われた私は「抜け殻とってる」と答えた
兄ちゃんは何が楽しいのかわからんけど、座って私がセミの抜け殻を探すところを見てた

また別の日 八幡さんに行った
そこには兄ちゃんもいた 今度は境内の裏手の林で抜け殻を探した 兄ちゃんは危ないよーとか言いながら立って見てた

そのまた別の日も兄ちゃんはいた
私はふと思った この兄ちゃん誰や?と
ド田舎だから、20歳そこそこくらいの若い兄ちゃんなんてみんな顔見知りの筈なんだけど、この兄ちゃん祭でも見たことないわ と
そもそもなんだその格好は とも
不審に思ったので私は抜け殻探しをやめて帰った 兄ちゃんは「あれ帰るの」とか言ってた

別の日 私は一つ上の男の子2人を引き連れて八幡さんに行った
リュックに懐中電灯と、近所の商店で買ったポテチとコーラを詰めて、軽く冒険気分だった
2人には「なんか知らん兄ちゃんいるから見て」と言って連れてきた 2人はよくわかってなかった
結果 その日兄ちゃんはいなかった
嘘つき扱いされた私はコーラを振って2人にぶっかけた そのあと鬼ごっこしながら公園に向かって、日暮れまで遊んだ

別の日、八幡さんに1人でいくと、兄ちゃんはいた
「友達に乱暴しちゃだめだよ」と言った
よくわかんないけど私は「兄ちゃんのせいだよ」と言った
兄ちゃんは笑って「抜け殻探し手伝うから許してよ」と言った 償うなら許したろと思って、私は兄ちゃんとセミの抜け殻を探した
高いところの抜け殻も手に入り、虫かごいっぱい集まって、気分がよかった

そこからしばらくは、夏休みで従兄弟がきて遊んだり、友達とあそんだりして、1人で八幡さんに行くことはなかった
学校が始まって9月になるころ、兄ちゃんのことを思い出し1人で八幡さんに行った
けど、そこに兄ちゃんはいなかった
何度か通ってみたけど、兄ちゃんの姿はあれから1度も見てない

ちょっと長くなった上によくわからなくてすまん
あの甚平の兄ちゃんは何だったんだろう?1人で行くと会えたんだ
不審者かなと当時は思ったけど、今は「お化けか神様だったんかなあ」とぼんやり思っている