買い物を済ませ、時計を見ると既に18時を過ぎていました。空腹だったので、このままフードコートで夕飯を済ませて帰ることにしました。
フードコートは2階にありました。疲れのせいか気分が悪くなってきたので、先に夫の食べる分だけ注文してくるように伝え、私は適当に場所を取って休んでいました。
注文を終えて戻って来た夫に、
「さっきから具合が悪くて何も食べられそうにない。でもこうやって座っていると楽だから、あなたは気にしないで食べて」
と言いました。
息子がグズり出したということもあり、夫が早めに食べ終わってくれたので、早々にフードコートを後にして駐車場に向かうことになりました。
車を発進させ、駐車場を後にすると夫がぽつりと、
「さっきフードコートで何か見た?」
と聞いてきました。
夫はこんな聞き方をする時がたまにあります。
零感の私には何も見えていなかったので、何も見ていないとそのまま伝えました。
それならよかった…ともう一度夫がぽつりと呟きました。
帰宅後体調も回復したので詳しく尋ねてみました。
夫曰く、そのフードコートに入って右手側の壁一面に「何か」がいたそうです。
正視出来ずに目を逸らしていると、私が適当に席を見つけ、その右手側の壁を向くように座っていたと。
私が見えていないのならそれでいいと思い、夫は何も言わずに右手側の壁を背にするように席に着いたそうです。
けれど、さっきまで元気だった私の顔色が明らかに悪くなっていたり、私の膝に座っていた息子が夫の背後の壁の方を見ながら泣き出したりしたのを見て、さすがにここから早く離れなければと思ったらしいです。
その「何か」は時折私たちの座るテーブルに近づき、夫と私(+膝の息子)の間まで来た瞬間もあったそうです。
「そんなのが近くまで来て、あなたは大丈夫だったの?」
と尋ね、
「俺はそいつの後ろ姿しか見なかったから」
と言われた時は本当にゾッとしました…。
「でもね、もっとヤバいのはあのフードコート横のエレベーターだと思う」
そういえばあの帰り、私に息子を抱っこするように言った後、夫は大量の荷物に加え、畳んだベビーカーをも持ち上げてエスカレーターに乗り、駐車場まで向かっていたのを思い出しました。
息子が見て泣き出したもの。
大の大人が正視出来ないようなもの。
私と息子は一体何と対峙していたのでしょうか。
コメントする