nerusan0614_11_TP_V

俺の母親は、俺が小学生2年生の時に死んだ。
死んだことを納得できず、そのあと一ヶ月くらい母親が帰ってくるのでは?と玄関に座って待っていたこともあった。

ある日、学校から帰ると普通に母親がいた。
買い物をすまして夕食の準備をしていた。

父親が帰ってきたが、母がいることに驚くようすはない。
子供だったので、母が帰ってきたことがうれしくて、そのまま生活した。

学校にいって、友達に「死んだおかあさんが帰ってきた」
と話しても、「XXくんのおかあさん、死んでないじゃん」
と言われた。

楽しい日々が続いた。
1年半ほどした、その日は遠足だった。
母親の作ってくれた弁当はとてもおいしかった。
遠足から帰ると、家に母親の姿はなかった。

家中さがしまわったがいなかった。母親が生活していた
痕跡もなかった。

夜になって父親が帰ってきたので、
「おかあさんがいなくなった!」と言ったら、
「おいおい、おまえ、いまごろ何言ってるんだよ」と
困った顔で言われた。次の日から、父親と二人の生活が始まった。

父親にたずねてはっきりと確かめたかったが、
母との生活が否定されてしまうようでできなかった。ずっと。
その父ももういない。

30年以上たったいまでも、あの時の母との生活を思い出す。