去年の夏休み、田舎のじーちゃん家に遊びに行って、妹と2人で泊まってたんだけど、
まじで訳わからんことが起きた。
昼にそうめん食って、その後妹が「かくれんぼしよー!」って言ってきて、
まぁ暇だったし、いいかって思って俺が鬼になった。
数かぞえてから家中探しまわったんだけど、どこにもいない。
押入れもトイレの裏も見たけど、まじで姿が見えなくて。
で、なんか嫌な感じして庭に出た。
庭のすみっこの方に井戸があって、そこから小さい声が聞こえた。
「おにいちゃん…ここだよ…」
いや、ガチで心臓止まるかと思った。
のぞいても真っ暗で何も見えない。
その時、家の中から妹が走ってきて、
「なんで見つけてくれないのー!」って。
そのときは「押入れにいて見逃したんかな」って思ったけど、
なんかちょっと違和感あった。
笑い方が作り物っぽいっていうか、今思うといつもの妹の感じじゃないっていうか…。
で、その夜、なんか胸騒ぎがして眠れなくて、
次の日また井戸のとこ行ってのぞいてみた。
そしたら、底に妹がいた。
あんまり深い井戸じゃなかった。こんなに浅かったっけ?って
妹は泥まみれでぐったりしてて、右足が明らかに変な方向に曲がってた。
でも、うっすら目は開いてて、呼吸もしてるっぽかった。
まじで意味わかんなくて、叫んでじーちゃんに119呼んでもらって、
救急と消防が来て助けてもらった。
妹は救急車にのせられて、俺とじーちゃんも一緒に病院へ向かった。
足は折れてたし、かなり衰弱してたけど、なんとか助かった。
医者いわく「よく一晩もったな」って。
じーちゃんは妙に冷静で、医者と普通に話してた。
妹はそのまま入院することになったらしい。
じーちゃんが「家あけっぱなしだから、先に帰っとけ」って言うから、俺だけ家に戻った。
そしたらそこに妹がいた。
普通にテレビ見て笑ってて「おかえりー」とか言ってきた。
じーちゃんも、何事もなかったように一緒にテレビ見てた。
夜は妹とじーちゃんと一緒に普通に晩メシ食った。
カレーだった気がする。
風呂入って、布団敷いて寝た。
その夜も特に何か起きるわけでもなくて、テレビ見て、ごはん食べて、風呂入って、寝る
いつも通りの流れだった。
ただ、明らかにおかしいことが起きたはずなのに、
全部が「何もなかった」みたいに進んでいく。
じーちゃんも、妹も、まるで最初からそうだったみたいな顔して。
俺も何か言うべきなんだろうけど、言えなかった。
空気がそうさせてくれなかったというか、
逆らったらいけない気がして。
モヤモヤしながらその日は終わって、
布団に入っても、あの声と、井戸の底の妹の顔が頭に焼きついて離れなかった。
昼間のことを思い返すと、正直、頭おかしくなりそうだった。
でも「妹は無事だったし、いいよな」って
そう自分に言い聞かせて、目をつぶった。
翌朝、東京の家に戻った。
なんか、あれだけのことがあったのに
次の日にはいつも通りの生活に戻ってて、それが逆に怖かった。
で、いま。
あれからだいぶ経ってるけど、俺も妹も普通に暮らしてる。
妹は、昔となんにも変わってない。
コメント
コメント一覧 (1)